研究課題/領域番号 |
23656085
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澄川 貴志 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80403989)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノ / 単結晶 / 引張試験 / 寸法効果 / 透過型電子顕微鏡 |
研究概要 |
平成23年度は、引張り状態を実現する試験片の力学的形状設計を行い、実際に金単結晶を用いたナノワイヤ試験片を作製した。ナノサイズの構造体は、微小な荷重で変形や破壊を瞬時に起こすため、その取り扱いが極めて困難である。世界的な研究例を見ても、ナノ構造体に対して、圧子を用いた接触負荷による手法が適している。そこで、圧子を用いた圧縮負荷によってナノワイヤに引張負荷が加わる試験片形状を決定した。試験片はオンチップ型を採用し、シリコンの枠に長さ3 μmの金単結晶ナノワイヤ試験片が取り付けられている。ダイヤモンド製の円錐型圧子を用いてシリコン枠に圧縮負荷を与える試験を透過型電子顕微鏡内で実施し、目的とする変形と荷重分解能が得られることを確認した。試験片は、結晶方位を特定した材料から集束イオンビーム加工装置を用いて切り出し、マイクロサンプリング(集束イオンビーム内でブロックをピックアップする手法)とタングステン蒸着によってシリコン枠に取り付ける。このため、材料からの切り出し方向を考慮することにより、任意の結晶方位を有するナノワイヤ試験片への引張り負荷が可能となる。また、ナノワイヤの両端が固定されたオンチップ試験片であることから試験片の取り扱いも容易であり、ナノサイズの試験片を直接引っ張る手法に比べて引張り軸調整の精度は極めて高い。また、イオンミリングの出力調整により、試験片直径を150~300 nmにまで制御できることを確認した。現状の技術を用いて直径100 nm以下の試験片の取得も可能であり、次年度以降で試験片作製及び引張り試験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定では,単一材料に対して力学設計を行い,引張成分が支配的である擬似的な引張り状態を実現することを計画していた.しかし,シリコン枠にナノワイヤを接着する手法を考案し、更に進んだ力学設計を施すことで、試験片に対する純粋な引張試験手法の開発に成功した。さらに、この手法では,シリコン枠部分がナノワイヤよりも硬いため、表面加工層除去のためのイオンミリングを施してもナノワイヤのみが優先的に加工される。すでに次年度実施予定の単一すべり方位を有する単結晶ナノワイヤ試験片の作製も行っており、研究計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 前年度決定した試験片形状及び作製手法を基に、軸方向の結晶方位を特定したナノワイヤ試験片を作製する。まず、基礎データとして、ワイヤの直径は80 nm~300 nm程度、長手方向の方位は、単一すべり方位となる方向に配向する。必要に応じて熱処理(~200℃程度)を行い、表面加工層の完全な除去を目指す。(2) 作製したナノワイヤ試験片に対して、透過型電子顕微鏡内で引張試験を実施する。引張試験には現有の微小負荷装置を使用し、試験片先端部にダイヤモンド圧子を用いて負荷を与える。透過型電子顕微鏡に接続したデジタルビデオカメラを用いてナノワイヤの変形挙動を連続録画し、負荷チップの背後に設けられた荷重センサとその場観察画像から、ワイヤが破断するまでの荷重と変位を取得する。得られた結果を基に、マクロ材の変形・破断挙動との比較を行う。(3) 直径の異なるナノワイヤ試験片を用意して引張試験を実施し、試験片の破断荷重と破断伸びをそれぞれ測定する。得られた結果を基に、ナノ材料が有する寸法効果や変形特性について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ナノワイヤ試験片へ負荷した際、荷重センサから出力される信号を増幅させる電力供給装置を購入する。また、得られた成果について、国内・国外の学会において発表を行う。
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