研究課題/領域番号 |
23656088
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
箕島 弘二 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50174107)
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研究分担者 |
平方 寛之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40362454)
米津 明生 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40398566)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノ薄膜 / 薄膜創成 / 自己組織化 |
研究概要 |
バルク材では延性的な性質を有する金属においてもぜい性的な特性を呈するナノ薄膜に対して,3次元幾何学的外部構造を自己組織的に形成させることにより,高い変形裕度を有するナノ薄膜の創製法を開発することを目的とする。すなわち,基材(樹脂犠牲層)に圧縮ひずみを付与することにより,周期的な微小座屈(リンクル)構造を生成させ,その上に金属を成膜し,さらに基材を分離させることにより,リンクル構造を有する自立ナノ薄膜を創製する手法を開発する。このような微小リンクル構造を持たせることにより,変形裕度を大幅に向上させ,しかも薄膜の座屈という自己組織現象を利用するため経済性に優れる薄膜創成法となることが期待され,MEMS等の微小部材創製に対して今までにない変形裕度向上策を提供し,ひいては新たなMEMS開発に大きく貢献せんとするものである。 本年度は,樹脂系犠牲層に表面層の座屈を利用してリンクル形状を形成させる方法を検討した。付与する圧縮ひずみ量,樹脂層の成膜厚さ,部分硬化厚さに影響する圧縮ひずみを与える時期に着目して樹脂系犠牲層に形成されるリンクル構造に及ぼす諸因子の影響を実験的に明らかにするとともに,樹脂の硬化過程における機械的特性をモデル化して,リンクル構造形成メカニズムを座屈理論に基づいて解明した。さらに,リンクル構造を付与した樹脂犠牲層の上面に銅薄膜を製膜し,ウエットエッチングにより犠牲層を除去することで,リンクル構造を有する自立ナノ薄膜試験片を作製する技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り樹脂系犠牲層の硬化過程における力学特性を解明し,座屈を利用したリンクル構造の形成技術を確立した。さらに,自立したリンクル構造ナノ薄膜試験片の作製にも成功した。得られた成果について,国際会議(International Conference on Advanced Technology in Experimental Mechanics 2011),および2件の国内会議(日本機械学会M&M材料力学カンファレンス,日本機械学会関西支部第87期定時総会講演会)にて講演発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
薄膜構造の多様化を実現するため,樹脂犠牲層のリンクル構造形成時に独立した2方向の圧縮ひずみを段階的に付与する手法について検討する。確立した手法を用いて,自立リンクル構造ナノ金属薄膜の創製し,その機械的特性の評価を行う。MEMSや電子デバイスにおいて使用される銅ナノ薄膜を対象として,既設の微小力学負荷試験装置を用いて,引張試験を実施する。これにより,破壊までの荷重(応力)と伸び(ひずみ)曲線に及ぼすリンクル形状の影響を実験的に明らかにして,伸縮特性に優れたリンクル構造を検討する。さらに,変形挙動を商用有限要素解析コードにより解析し,リンクル構造薄膜特有の変形と破壊の力学について考察を加えることで,より高性能なリンクル構造薄膜の創製法を開発する上での基礎的知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく。次年度は,樹脂犠牲層のリンクル構造形成時に独立した2方向の圧縮ひずみを段階的に付与する手法について検討し,それを実現するための装置開発,成膜用材料,成膜・特性評価に必要となる物品費に充当する計画である。
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