衝撃荷重が作用した場合等,高速で変形する材料中の変形の様子を観察・計測することは衝撃吸収の様子を理解するうえで重要なことである.このために本研究では,CCDやCMOS撮像素子を有する高速度デジタルカメラと画像処理ソフトおよびメタルハライドランプ等の高輝度照明装置を用いて,高速で材料の変形量を計測するためのモアレ縞を観察する装置を開発した. モアレ法とは試料に変形させるためのモデルグリッドを作製し,これに基準となるマスターグリッドを重ね合わせ,重なった部分と重なり合わない部分とでできる濃淡の縞(モアレ縞)より変形量を測定する手法である.本手法では試料に変形させるためのモデルグリッドを作製し,マスターグリッドに代わるものとしてはCCDやCMOS等の撮像素子(ピクセル)の並びを用いる.モデルグリッド間隔とマスターグリッド間隔がわずかに異なるときモアレ縞が生成する.高速度デジタルカメラを用いることにより,そのモアレ縞を数千分の1秒の間隔で観察することができた.本手法は直接グリッドを観察するよりもはるかに少ないピクセル数で観察できるので2桁以上も高速でひずみを観察することができる. この装置および技術を用いて,発泡スチロールの試料に間隔50ミクロンのモデルグリッドを作製し,重錘を試料に落下させる落錘試験時のモアレ縞の変化を数千分の1秒の間隔で撮影し,このモアレ縞の変化より,数千分の1秒の間隔での変形(ひずみ)をとらえることができた.生じたひずみは,均一ではなく落錘直下の領域のひずみが大きく,数倍の違いがあること,また,高速変形のモアレ縞を観察するためには露光時間が大きく影響することを明らかにした.
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