電解液ジェットを工作物(陽極)に当て、ノズルを陰極として電流を流し、電解作用により微細加工を行った。工作物の硬さによらず加工でき、残留応力の発生がなく、ジェット直下のみを選択的に加工できる。この特長を生かして前年度に引き続き、超硬合金の微細加工を行った。劇薬であるNaOH水溶液を用いる代わりに、弱毒性の硝酸ナトリウム水溶液を用い、交流パルスを用いることにより、工作物がマイナスの極性のときにジェット直下で生成されるNaOHが、プラスのときに生成される酸化タングステンを溶解することによって、ジェット直下で選択的な加工が行える。このとき、WC粒子とCoバインダの両方が均一に溶出し、表面粗さがよい加工が行え、しかもジェット直下に溶出が集中するために必要な電流値、パルス幅、デューティ比の最適値を実験より求めた。また、ノズルがプラスの極性で電解溶出しないように、半導体シリコンを用いたスリット状のノズルを開発し、交流パルスを用いてもノズルが消耗しない電解液ジェット加工を実現した。さらに、円筒ノズルの場合は大面積を加工するにはノズルの走査が必要であるが、スリット状ノズルから噴出するフィルム状ジェットを用いて、円筒ノズルよりも少ない走査回数で、大面積を効率よく加工できることを示した。 次に、上記のスリット状のノズルを、直線状から曲線状に変え、曲面状のフィルムジェットを噴出可能なノズルを開発した。その製作方向としては、ワイヤ放電加工により曲面状に切断したオス・メス形状のブロック材のペアーで、スリットを設けた薄板を挟み込む方法を採用した。これによって、円筒状のジェットを2次元的に走査することなく、曲線状の溝を加工できることが分かった。 よって本研究により、金型の超硬パンチや超硬ピンの微細複雑形状の電解加工が可能となった。
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