研究課題/領域番号 |
23656097
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30283724)
|
研究分担者 |
高増 潔 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70154896)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 微細構造 / 高分解能計測 / 回折限界 |
研究概要 |
平成23年度の実績概要をまとめると,以下の3項目となる.1.近接場光相互作用に着目した非破壊内部情報の応答特性解析法の理論的検討:高アスペクト微細構造において支配的な応答が予想されるプラズモン共鳴も記述可能な計算機シミュレータを構築した.具体的には,マクスウェルの方程式を時空間において差分化,各要素毎に逐次的に電磁場の挙動を計算可能なFDTD法を,任意平空間の複素電場分布を仲介して,フーリエ光学と融合し,高アスペクト微細構造光学応答を,近接場応答とともに遠隔場応答としても算出可能な数値演算シミュレータを構築した.これにより,従来困難だった,任意媒質,また,微細構造エッジやアスペクト比,倒れ角など,任意な形状分布として,計測対象を扱うことができるようになり,高アスペクト比の遠隔場での影響も定量的に調査可能となった.2.微細ナノ空間で生成される近接場応答を高分解能で高速検出するための遠隔場検出法の模索:光学照明に周期性,構造性を持たせることで遠隔場においても,回折限界を超越した情報取得が可能となる.本年は,生成照明の設計値からのズレがどのように超解像特性に影響を与えるのか,また,提案研究目的である内部情報取得に対してどのようなメリットがあるのか,理論実験の両面から解析した.結果,Si内の内部情報に関しては,波長1064nmの近赤外光を利用することで,回折限界を超越した100nm以下の分解能での情報検出が可能であることが分かった.3.高アスペクト構造計測におけるキャリブレーション方法の実験的検討:また,提案手法の検証を想定して,STEMで観察されたSi格子情報に基づき,サブナノメートル精度での微細線幅計測を実現するCD-SEMキャリブレーション法の開発を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,提案研究課題を実現するにあたり,より着実に成果として還元するために以下の3点からなる研究軸を設定して研究推進を行った.結果,それぞれの研究軸において,下記の進捗を得たため,上述の自己区分を決定した.1.近接場光相互作用に着目した非破壊内部情報の応答特性解析法の理論的検討:高アスペクト微細構造内で生成が予想される,プラズモン共鳴励起局在光による近接場相互作用およびその遠隔場応答を計算機内でシミュレート可能となった.2.微細ナノ空間で生成される近接場応答を高分解能で高速検出するための遠隔場検出法の模索:内部情報取得の観点では,その利用が望まれていたが,回折限界の観点では,原理的に不利な波長1マイクロメートル以上の長波長光源においても,100nm以下の計測分解能が実現できることを示した. 3.高アスペクト構造計測におけるキャリブレーション方法の実験的検討:従来の線幅を基準とせずに,Si内部の格子情報を基準とする新しい形状キャリブレーション法が実験的に有効であることを示した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度成果を着実に生かすために,平成23年度に構築した研究軸を中心にして,研究を遂行する.1.近接場光相互作用に着目した非破壊内部情報の応答特性解析法の理論的検討:高アスペクト比微細構造における内部欠陥情報の取得特性について,理論的に調査する.同時に,構築シミュレータにおいて,フラウンフォーファー回折を利用しているサブルーチンをより柔軟な光学パラメータ設定が可能なフレネル回折ベースに改良を進める.2.微細ナノ空間で生成される近接場応答を高分解能で高速検出するための遠隔場検出法の模索:平成23年度で進めた構造照明法のさらなる開発を進める.具体的には,高分解能性の観点で望まれるコヒーレント結像において,逐次超解像演算を可能とする新概念照明の実現を目指す. 3.提案手法の検証のための実験装置開発・検証:最終年度となるため,検証実験装置を開発し,提案手法の有効性について評価を試みる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は,以下の対象に対して執行する予定である.検証実験用光学系構築のための各種光学素子の購入,検証実験用光学系制御システム化のための各種電子デバイスの購入,基準試料の作成費,実験結果評価用電子顕微鏡等のレンタル費,検証用原子間力顕微鏡高アスペクト比対応プローブ等,評価用消耗品.
|