研究課題/領域番号 |
23656101
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森田 昇 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30239660)
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研究分担者 |
比田井 洋史 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60313334)
松坂 壮太 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30334171)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | AFM / マイクロ・ナノ加工 / LSI / 故障解析 |
研究概要 |
本研究では,微細で複雑な3次元構造を持つLSI回路の故障解析手法として,AFM機構と加工用カンチレバーによるLSI多重配線層の単一層表出加工・診断法を提案している.まず,各層で異なる材質を有するLSIの微細加工を可能にするため,切れ刃先端形状や剛性の異なる加工用カンチレバーを設計し,その製作手法を確立した.本手法は,(1)円形パターニングされたSi基板への異方性エッチングによって四角錘型Siモールドを作製し,ダイヤモンド膜を成膜後,再びエッチングによりモールドを溶解させる「ダイヤモンド切れ刃作製工程」,(2)レバー形状にパターニングされたSi基板への異方性エッチングによって,必要に応じた剛性を有するレバーが作製可能な「レバー作製工程」,および(3)エポキシ樹脂によって切れ刃をレバーに装着する「加工用カンチレバー組立工程」からなる. このようにして製作した加工用カンチレバーをAFMに装着し,SiO2絶縁膜,Al配線,W配線の積層されたLSIに対して表層からの除去加工を試みた.その結果,たわみ剛性の低いレバーを用いたマイクロニュートンオーダの低荷重域では,加工深さが小さく,また切れ刃の摩耗により,目的とする層までの加工は困難であることがわかった. そこで,ミリニュートンオーダの高荷重域での加工が可能となるよう,剛性の高いレバーを用いて同様の加工を行った.その結果,荷重変化によって加工深さが大きく増加し,例えば1層目のAl配線と2層目のAl配線,或いは2層目のAl配線及び下層のW配線を表出することが可能となった.加工部の底面は,表面よりも凹凸が小さく,表面形状の影響を低減することができた.切れ刃先端をSEMで観察すると,低荷重時の加工距離が長い切れ刃よりも摩耗が進んでいたが,低荷重時に見られたような加工深さの急激な減少は見られず,工具摩耗の影響を低減することができたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画に記載した各項目,すなわち,加工用カンチレバーの設計と製作,ならびに製作したカンチレバーを用いたLSIの微細加工特性の調査は既に実施されている.現在は,これまでに得られた知見に基づいて,高精度かつ効率的な薄層除去加工を行うためにカンチレバーが具備すべき条件を検討している段階にあり,当初の計画は概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得た成果と知見に基づき,LSIの段階的薄層除去加工における特異現象の抽出とその要因解明を行う.また回路パターンを分解能よく,十分平滑な状態で表出させるための原理を確立する.これらの結果から,より高能率で高精度な単一層表出加工を実現するに最適な加工用AFMカンチレバーの提案と試作を行う.具体的には,剛性の異なる複数のレバーからなるマルチカンチレバーや,複数のチップ群が1本のレバーに装着された多刃カンチレバー,さらにこれらを組み合わせた多刃マルチカンチレバーを試作し,加工実験を行う.最終的には,これらの知見を統合し,LSIの故障診断システムを完成させるとともに,成果の取り纏めと公表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の方針で研究を進めるため,以下の項目に対して研究費を使用する(単位:千円).・各種表面分析料(2回×100=200)・リソグラフィ設備使用料(10回×20=200)・測定用カンチレバー(30個×5=150)・加工用LSI(30枚×5=150)・成果発表用旅費(2回×50=100)
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