研究課題/領域番号 |
23656104
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐野 泰久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40252598)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 溝加工 |
研究概要 |
大気圧プラズマは平均自由行程の小ささから、プラズマが電極近傍に局在化して生成する。そのため、エッチングを行いたい部分のみにプラズマを発生可能であり、マスクなしの除去加工(プラズマエッチング)が可能である。しかしながら、1mm以下の微小なプラズマを発生させるためには針状電極や細いワイヤー電極を用いる必要があり、熱的な限界から投入可能電力が低く、高能率な加工は困難であった。申請者は、小隙スリット電極を用いることで、微小な高密度プラズマが生成できる可能性を見出しており、本研究ではその原理を理解するとともに、これを応用した高能率マスクレス溝加工の可能性を見極めることを目的としている。 今年度は、基礎実験として、矩形の平板電極を1mm以下の間隙を設けて2枚並べた構成の小隙スリット電極を複数個作製し、加工特性を評価した。まずは、スリット部と平行平板部の加工速度比の検討を行った。これまでの検討では、開口部(スリット部)以外の場所においてもプラズマが発生し、加工が行われていたため、スリット部での加工速度の定量評価が困難であった。電極-試料間距離を0.1mm以下に狭めることで、並行平板部における加工は行われず、スリット部に対応した部分のみに溝形状が形成されることが分かり、実用上有益な情報が得られた。しかしながら、スリット間隙の変化に伴う加工特性の変化を取得する基礎実験を行った結果、加工特性が溝方向に沿って大きくばらつき、評価が困難であった。今後、試料と電極間の間隙精度の向上や反応ガス供給法を見直すこととで溝方向の分布を改善し、定量的な検討を行ってゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初今年度実施予定だった、現象を理解するための基礎実験ついては、スリット部で形成される溝形状の溝方向分布が大きく、評価が困難であった。一方で、当初次年度に計画していた、スリット部と平行平板部の加工速度比の検討を今年度に前倒しして実施し良好な結果を得ることができたことから、全体としては「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
電極-試料間距離を0.1mm以下に狭めることで、並行平板部における加工は行われず、スリット部に対応した部分のみに溝形状が形成されることが分かった。そこで、電極-試料間距離を0.1mm以下として、スリット間隙の変化に伴う加工特性の変化を取得する基礎実験を行ったが、加工特性が溝方向に沿って大きくばらつき、評価が困難となった。ばらつきの原因を調査検討するのに時間を要したため、当初製作を予定していた種々の形状を有する電極を製作する時期がずれこみ、次年度使用額が生じる結果となった。ばらつきの主な原因は、試料と電極間の間隙精度が不十分であったこと、および反応ガスの供給法に問題があったことであることが分かったため、翌年度にはこれらを改善することで溝方向の分布を改善し、種々の形状を有する電極を作製し、基礎的な検討を行うとともに、マスクレス溝加工用電極モジュールを設計製作し、応用検討を行ってゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
基礎実験用の種々の形状を有する電極の製作(450千円)、応用を意図したマスクレス溝加工用電極取り付けモジュールの設計・試作(700千円)、前記モジュール用各種電極試作費(450千円)、加工実験用ガス(ヘリウムと六フッ化硫黄の混合ガス)(400千円)、実験用試料(加工用のシリコンウエハ及び石英ウエハ等)購入費(375千円)、として使用する予定である。
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