フッ素ポリマーは低誘電率、低誘電正接であるため高周波材料として理想的である。しかしながら、表面エネルギーが低く、化学的に不活性なため、高密着性を有する金属配線をフッ素ポリマー上に作製するには何らかの表面処理が必要となる。本研究では、大気圧プラズマプロセスと液相中の自己組織化プロセスを融合させた、大気圧プラズマ化学液相堆積法によるフッ素樹脂基板表面の高密着性銅メタライジングプロセスの開発を行った。テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)に対して大気圧ならびに中圧(0.2-4kPa)条件において He プラズマを照射したところ、形成された過酸化物ラジカルは中圧プラズマ処理と比較して、中鎖ラジカル成分が主に存在することがわかった。過酸化物ラジカル基にポリアクリルアミンをグラフト共重合させて無電解銅めっき膜を形成して 90°剥離試験を行ったところ、密着強度として 1.0 N/mm が得られ、製品規格値(0.65 N/mm)を超える PFA 表面の高密着性銅メタライジングに成功した。また FTIR 測定から、銅めっき膜が PFA のバルク部で剥離する割合は大気圧プラズマ処理のほうが中圧プラズマ処理と比べると低く、主に PFA/ポリアクリルアミングラフト層の界面で剥離しており、設計通りの無電解銅めっき膜/PFA 界面が得られていることが示唆された。これらの結果から、大気圧プラズマ処理はバルク部の機械的強度を弱めることなく、表面に高密度で中鎖ラジカルの形成が可能であり、高い密着性で銅と不活性な PFA を接着することができることが示唆された。
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