研究課題/領域番号 |
23656108
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉田 総仁 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50016797)
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研究分担者 |
日野 隆太郎 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10283160)
濱崎 洋 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30437579)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 成形加工 / 板成形 / CAE / 大ひずみ / 応力-ひずみ関係 / 異方性 |
研究概要 |
実際のプレス成形では50%以上の大ひずみが生じるので,成形シミュレーションには材料の大ひずみ域での応力-ひずみ関係を表す材料モデル(材料パラメータ)の使用が不可欠となる.しかし現状では単軸引張り実験で得られた10~25%程度のひずみ域の応力-ひずみ関係を外挿して特性を推定している.このことが成形シミュレーションの予測精度を大きく左右している.本研究は,大ひずみ変形が可能なプレス成形実験データを用いて,その成形シミュレーションを行い,重要な大ひずみ弾塑性特性を逆解析で求めるという新しいアイデアによりこの問題を解決しようとしている. 平成23年度では,まずはじめに,平頭パンチ穴広げ実験より得られるパンチ荷重Pと穴広げ率λの関係を用いて大ひずみ領域における加工硬化(応力-ひずみ関係)を弾塑性逆問題として求めるアイデアの検証を行った.大ひずみ域でのみ応力-ひずみ応答が異なるSwiftとVoceによる穴広げ試験の数値シミュレーションを行ったが,パンチ荷重Pと穴広げ率λについての両者の結果は顕著ではなく,この結果を用いた逆解析に用いても,大ひずみ域での顕著な応力-ひずみ関係の差異を表現することは困難であることが判明した.そこで,平頭パンチ穴広げ実験に代わる方法として,面内三点曲げにおける荷重-ストローク関係を用いることとした.これについては,数値シミュレーションとともに実験装置も試作して検討を行い,大ひずみ領域における応力-ひずみ関係をある程度同定できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では,平頭パンチ穴広げ実験より得られるパンチ荷重Pと穴広げ率λの関係を用いて大ひずみ領域における加工硬化(応力-ひずみ関係)を弾塑性逆問題として求めることを目標とした.この方法について数値シミュレーションにより検討したが, P-λ応答に及ぼす大ひずみ域での応力-ひずみ関係の影響が十分大きくなく,逆問題での特性同定が困難であることがわかった.そこで,それに代わる新たなアイデアとして面内三点曲げを考案し,それについて実験と数値シミュレーションの双方から検討した結果,この方法は有望であることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
1.大ひずみ領域における加工硬化特性の同定: 平成23年度に引続き,大ひずみ領域における加工硬化(応力-ひずみ関係)を面内三点曲げから求める方法について検討する.とくに今年度では,大きなひずみを与えるために,板に引張り力を加えながら曲げる引張り曲げを用いる方法について検討する.2.円筒深絞り実験による面内異方性の同定: 板材のr値の面内異方性の分布が円筒深絞りにおける成形カップ高さ(耳高さ)分布に対応していることを利用して,大ひずみ域でのr値および降伏関数中の異方性パラメータを逆問題として決定する.このときに,大ひずみ領域の応力-ひずみ関係は,平成24年度の研究で求めたものを使う.このようにして得られた大ひずみ応力-ひずみ関係と異方性を用いて円筒深絞りシミュレーションを行う.板厚分布および耳高さの分布のシミュレーション結果と実験結果を比較することにより本手法の妥当性を検証する.またパラメータ同定に最適な絞り比(ブランク径/パンチ径)を決める.
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費800,000円の内訳は次ととおりである.物品費400,000円(主に実験装置の試作にかかる消耗品,試験片加工など),旅費330,000円(情報収集および研究成果の発表),人件費・謝金70,000円(実験補助)である.
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