研究課題/領域番号 |
23656114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土屋 健介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80345173)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 摺動面 / ピッティング / なじみ / 鏡面加工 / 微細凹凸形状 |
研究概要 |
歯車や油圧モータ、軸受、シリンダ、などの摺動面は、潤滑油を付与しているが高い押付力と高い剪断力を課されている。ここでは、摺動を繰り返すうちに、表面の凸部同士が摩耗して平滑になる(いわゆる"なじみ")。だがこの間に、局所的だが大きな塑性変形によって、マイクロクラックが発生し、それが伸展して一部の表面が剥がれる。この不良は「ピッティング」と呼ばれ、トライボロジーの最大の問題点になっている。本研究はこのピッティング防止用として、マイクロクラック無しで"なじみ"が容易に生じるような、超長寿命の摺動面を提案する。具体的にひとつは、超精密加工を用いて、表層に残留圧縮応力を保ちながら表面を鏡面に仕上げた"はじめからなじみ切った"摺動面、もうひとつは表層に高さ10μm程度の凹凸を転写してから厚み10μmの潤滑膜を付与した"積極的になじませる"摺動面である。 平成23年度は、摺動加速試験において、鏡面研削した円筒同士で摺動させてみたが、このとき、寿命は予想通り、10倍程度長くなった。しかし、試験直後は粗い面の円筒と同様に、金属接触が発生し、発生密度は低いがマイクロクラックも発生していた。つまり、金属接触したあと、5分と短時間で潤滑液の上に"浮上"したが、少なくとも5分間の"なじみ"が生じていたことは確かである。このとき、研削した円筒の真円度や回転の振れを測っていなかったが、摺動面はうねりながら接触した可能性があることがわかった。そして、最終的にはピッティングが発生した。鏡面研削加工の加工力で、少数でもマイクロクラックを発生し、それを表層に残したことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
曲面に微細加工を施すために、リソグラフィ加工と機械加工を試している。前者は大面積への加工に時間がかかることと、大面積かつ曲面の場合は周辺で微細パターンの焦点が外れやすいこととが原因で、全面均一にパターン加工することが困難である。また、機械加工の場合は、歯車に用いられる鉄鋼材料に対する溝加工を行うと工具の磨耗が激しく全面均一な形状を維持するのが難しいということがわかった。以上の理由により、摺動面に微細形状を加工する工程の確立に時間を要したため、全体のスケジュールがやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度において発生した、摺動面の加工の技術課題に対し、加工条件や使用工具の最適化を図り、微細形状を加工した摺動面の寿命評価を行う。また、表面に犠牲膜を付与した摺動面を用意し、同様に摺動面の寿命評価を行う。その際、摺動抵抗に注目し、犠牲膜の磨耗メカニズムや接触面におけるメカニカルな現象解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度使用予定だった研究費は、その予備実験を行うための工具費、材料費、実験補助の人件費等に充てる。次年度の研究費は、犠牲膜を付与した摺動面の製作、評価に充てる。
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