研究課題/領域番号 |
23656114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土屋 健介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80345173)
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キーワード | 摺動面 / ピッティング / なじみ / 鏡面加工 / 微細凹凸形状 |
研究概要 |
歯車や油圧モータ、軸受、シリンダ、などの摺動面は、潤滑油を付与しているが高い押付力と高い剪断力を課されている。ここでは、摺動を繰り返すうちに、表面の凸部同士が摩耗して平滑になる(いわゆる“なじみ”)。だがこの間に、局所的だが大きな塑性変形によって、マイクロクラックが発生し、それが伸展して一部の表面が剥がれる。この不良は「ピッティング」と呼ばれ、トライボロジーの最大の問題点になっている。本研究はこのピッティング防止用として、マイクロクラック無しで“なじみ”が容易に生じるような、超長寿命の摺動面を提案する。具体的にひとつは、超精密加工を用いて、表層に残留圧縮応力を保ちながら表面を鏡面に仕上げた“はじめからなじみ切った”摺動面、もうひとつは表層に高さ10μm程度の凹凸を転写してから厚み10μmの潤滑膜を付与した“積極的になじませる”摺動面である。 平成24年度は、二つめの犠牲膜付与加工を行った。摺動加速試験において、多くの種類の潤滑膜を試みたが、それらの柔らかい潤滑膜は開始直後1 分間で剥がれてしまい、潤滑膜そのものよりも、成膜前に表面を荒らすためのエッチングやショットブラストの条件がその後の摩耗に影響した。また、潤滑液が局所的に切れて摩擦加熱されると、化学的な反応が生じて寿命がばらついた。 この潤滑膜の直後のはがれ防止のためにも予め表面を剣山のように凹凸を付与しておくことが有効であると考えられる。また、凹凸のピッチが大きいと、力がかかる凸部の金属接触部と力のかからない凹部との間に剪断応力が働いてクラックが発生するため、ピッチを小さくする必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
摺動面の表層に犠牲潤滑膜を付与したが、摺動加速試験の結果、表面の寿命が短い、かつ不安定であることがわかった。この原因として、母材と犠牲膜との間の密着強度や、犠牲膜自体の強度が不足していることが考えられる。これらの問題を解決するために、膜付け条件の最適化を行っている。 以上の理由により、摺動面の表面の犠牲潤滑膜の生成工程の確立に時間を要したため、全体のスケジュールがやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度において発生した、摺動面表層の犠牲潤滑膜の技術課題に対し、膜付け条件や母材表面凹凸形状の最適化を図り、犠牲潤滑膜を加工した摺動面の寿命評価を行う。その際、摺動抵抗に注目し、犠牲膜の磨耗メカニズムや接触面におけるメカニカルな現象解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、表面凹凸形状を持つ摺動面の製作、犠牲膜を付与した摺動面の製作、および評価試験に充てる。
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