筋骨格系のなめらかな運動を実現する生体関節は、過酷な摺動を受け続けながらも、生体の寿命程度の長期間を、表向きには「メンテナンスフリー」で作動する。これは、生体関節が重度の損傷に至りにくい構造を有するばかりでなく、仮に軽度の損傷が生じたとしても、それを「自己修復」する機能をシステムとして有するからである。生体に特有な自己修復機能を人工物に持たせて、「メンテナンスフリーな機械摺動面」を実現することを究極の目標に掲げて、本研究を開始した。以上のコンセプトを実証するための試験機を開発した。同試験機は、振子の先端に固定した金属製のボール(直径:19.1 mm)と、モータ駆動の回転軸に固定した金属製のリング(直径:60 mm、厚さ:10 mm)の円周面との衝突を利用している。切削ユニットの2台のステージ(切込深さを設定するための手動ステージと、送り速度を設定するための自動ステージ)に取り付けたバイトにより、リング円周面の金属酸化膜を除去することができる。振子の先端には、加速度センサが取り付けられている。振子と回転軸からそれぞれ導通をとり、リングを作用電極、ボールを補助電極とし、両面を電解質溶液で潤滑油して電場を印加することで、二面の衝突時および摺動時のリングの接触部に電解重合反応膜を成膜することができる構造になっている。もしくは、振子と回転軸からとった導通をインピーダンス計測用回路に接続することで、二面の衝突時および摺動時の潤滑状態をリアルタイムにモニタすることができる構造になっている。
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