研究課題/領域番号 |
23656121
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 敏郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10209645)
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研究分担者 |
高橋 徹 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90360578)
山田 崇恭 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30598222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シミュレーション工学 / 振動解析 / シンセシス / 境界要素法 / フォノニック構造 |
研究概要 |
本研究課題では、有効な振動遮断特性を有する構造を創成するために、固体中に動吸振構造を有する別の材料定数からなる固体を埋め込んだ周期構造をモデル化し、弾性波動の透過特性の計算を繰り返す必要がある。全体構造は、単位構造が無限に続く周期構造として考えることが、このような構造の設計理論を確立する上では第一義的に重要である。したがって、単位構造を一つ取りだして解析領域とする場合には、周期境界条件を導入する必要がある。本研究で対象とする問題は、単位周期構造の境界においては、周期境界条件を満足させなければならない。したがって本研究では、周期境界条件を組み込んだ定常振動波動問題に対する2次元、および3次元の数値解析法の定式化とソフトウェア開発をまず行った。その結果、次のような成果が得られた。(1) 2次元フォノニック構造の単位周期構造に対して、有限要素法による定常振動応答解析プログラムを開発した。さらに、局所共振構造に対する応答を調べるために、エポキシの母材中に鉛をシリコンゴムで被覆した構造を想定して定常振動応答解析を行い、バンドギャップと低周波数領域における振動遮断特性、各材料の振動状態を調べ、局所共振による振動遮断現象をシミュレーションで確認することができた。(2) 単位周期構造が無限に連続している場合の非線形固有振動数解析を高精度に行うための境界要素法による計算法をプログラムを開発し、まずヘルムホルツ方程式について開発した方法により高精度に固有振動数の計算を行うことができることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、周期境界条件を組み込んだ定常振動波動問題に対する2次元、および3次元の数値解析法の定式化と基本となる数値解析ソフトウェアの開発を目標とした。国内外の学会・国際会議で動向を調査して,本研究課題の新規性と重要性を確認すると共に、まず2次元の有限要素法に基づく単位周期構造の弾性振動応答解析ソフトウェアの開発に速やかに着手し、基本的なプログラムの開発を完了することができた。この結果は、日本機械学会の設計部門講演会と計算力学部門講演会で発表した。 さらに、バンドギャップの計算には高精度な固有振動数解析が必要であり、また、問題が基本的には開領域問題であることから、境界要素法を用いる必要がある。ところが、この問題を境界要素法で定式化すると非線形固有値問題となるため、従来有効な解析法は存在していなかった。本研究では、経路積分により非線形固有値問題を計算する方法が存在することに着目し、境界要素法にこの方法を適用して、高精度に固有値を計算するための考察を行うと共に、まず簡単な例としてヘルムホルツ方程式で支配される問題にこの計算法を適用した。その結果、極めて高精度に固有振動数を計算することができた。この成果は、日本計算数理工学会発行の計算数理工学論文集第11巻に受理され、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、三次元の動吸振構造を組み込んだフォノニック単位周期構造に対して、弾性波動の透過率解析と、材料定数、形状、トポロジー最適化による有効な周期構造のシンセシスを行う。すなわち、様々な動吸振構造を仮定して、2次元および3次元モデルについて弾性波の透過率の計算をまず行う。さらに、境界要素法による設計感度解析法を用いて、大きな弾性波遮断特性が得られる局所動吸振構造の形状最適化(担当:松本、高橋)と、レベルセット法を用いた構造のトポロジー最適化(担当:山田)を行う。また、2次元・3次元の同構造に対して、境界要素法による固有振動解析法を適用し、最適なバンドギャップ配置に対してを料定数、形状、トポロジー最適化による有効な周期構造のシンセシスを行うための計算法を考察する。トポロジー最適化は、境界要素法を用いることにより、従来の設計空間の緩和によって生じる中間領域を含まない明瞭な形状表現が可能となることから、動吸振構造が複雑な構造を取る場合についても最適なトポロジーを求めることが期待できる。以上の結果をとりまとめ、国内の学術講演会(4回を予定)及び国際会議(1回を予定)で成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰り越しが32円あるが、24年度においては物品費に繰り入れて執行する。平成24年度の使用計画は以下のようになる。(1) 物品費 100,032円 (記録メディア他)(2) 旅費 600,000円(国内学会成果発表4回、国際会議成果発表1回)(3) 人件費・謝金 10,000円(データ入力、計算結果整理)(4) その他 10,000円 (論文掲載料)
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