研究課題/領域番号 |
23656122
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡部 正夫 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30274484)
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研究分担者 |
小林 一道 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80453140)
矢口 久雄 群馬工業高等専門学校, 助教 (20568521)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分子気体論 / Enskog-Vlasov方程式 / 分子動力学 / 平均場運動論理論 / 超臨界 / 速度分布関数 / 輸送現象 / 界面現象 |
研究概要 |
本研究の目的は,超臨界水素に接している液体酸素の物質輸送速度を定量的に評価することである.そのため,本年度はEnskog-Vlasov方程式の数値解析計算手法の構築および二種分子の分子動力学計算手法の構築を行い,超臨界状態に到達する前の段階における輸送現象について考察した. まず,Enskog-Vlasov方程式の衝突項の単純化のため,分子は単原子分子であると仮定し,Enskog方程式の数値解析のために開発されたParticle schemeを用いて,Enskog-Vlasov方程式の数値解析手法を構築した.空間一次元計算を実行することにより,平衡状態で存在する液膜の気液界面における凝縮・蒸発輸送現象が,Enskog-Vlasov方程式を解くことにより得られるかを,分子動力学計算と比較することにより検証し,Enskog-Vlasov方程式の同一種気液二相流解析への適用について検討した.特に気体側正規化密度分布に関しては,分子動力学計算と非常に良く一致することを確認した.さらに,様々な非平衡状態について数値計算を行い,分子動力学計算結果と定性的な一致を見ることを確認した. 次に,分子動力学計算により,二種の分子混合状態における輸送現象について検討した.特に気液平衡液膜が存在する場合について,界面近傍での分子挙動について検討した.液膜内の分子濃度を観察することにより,二種分子の混合状態は液膜内厚さ方向に均一ではなく,特に界面近傍で大きく混合比が変化することを観察し,異種分子間相互作用の効果について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Enskog方程式の数値解析のために開発されたparticle schemeを用いてEnskog-Vlasov方程式の数値解析手法を構築し,気液界面・相変化が存在する流れを解析することが,予想以上に困難であったため,Sutherland potential parameterの考察が不足している.また,分子動力学計算においても,超臨界状態に至る前の状態の二種分子混合輸送現象に対する知見が不足している.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はないが,超臨界状態に至る前の亜臨界二相状態の二種分子混合輸送現象について知見不足が明らかになったので,亜臨界二相状態の二種分子混合輸送現象についてより詳細な解析・考察を行い,超臨界状態との比較対照としての知見の蓄積をはかる.上記をふまえた上で,超臨界及び亜臨界流体の物性値の検証と超臨界混合界面での非平衡挙動の解析を行う. 1.超臨界及び亜臨界流体の数値解析結果を検証する. 単一成分の分子の超臨界状態における熱力学的・流体力学的物性値を,本年度開発した数値解析手法を用いて求める.得られた結果を,分子動力学計算結果および文献値と比較することにより,本手法の超臨界流体への適用可能性を検証する. 2.超臨界及び亜臨界界面での非平衡挙動を解明する. 超臨界状態の分子に接する亜臨界状態の異種分子の気液界面での挙動を解析するために,一次元計算を行う.系の圧力を一定に制御し,異種分子が亜臨界から超臨界までの広い範囲にわたって,数値解析を行う.特に,亜臨界状態のときに超臨界混合界面が出現するかを確認し,その挙動を詳細に検討する.得られた全ての条件において,物理特性を定量的に評価し,混合界面での物質輸送現象を解明する. さらに,超臨界混合界面での非平衡挙動の解析について,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,運動量理論計算および分子動力学計算の数値計算コードを構築し,検証することが終了した.当初の予定では,構築したコードを用いて様々な条件下で実行する計画ではあったが,Enskog-vlasov方程式をparticle methodを用いて数値的に解く計算コードの開発が想定以上に困難であり,また,その検証にも細心の注意深さが要求された.そのため,大規模な計算を行うよりも,小規模な計算を繰り返し行うことにより,開発した計算コードの信頼性を向上させることが最優先であると計画を変更した.その結果,購入予定であった数値解析用計算サーバは,今年度は必要ではなく,現有の開発環境で,コード開発および検証を行うことに計画を変更した. 本年度購入予定であった数値解析用計算サーバは今年度未使用額を用いて次年度購入する予定である.次年度は開発した数値計算コードを用いて,今年度から着手する予定であった,種々の条件で数値計算を行うことに着手する.本研究ではParticle schemeを用いてEnskog-Vlasov方程式の数値解析,および多数の分子を用いた大規模分子動力学計算を行うため,高CPU負荷・多メモリ使用のコードが容易に実行可能な高性能数値解析用計算サーバが必要である,また,計算条件を種々に変化させて計算を繰り返す必要があり,専用の数値解析用計算サーバを,今年度未使用額を用いて購入する.
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