研究課題/領域番号 |
23656129
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉井 康彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345108)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 毛管凝縮 / ナノ構造体 / 凝縮速度 |
研究概要 |
4大学ナノ・マイクロファブリケーションコンソーシアムにて所有しているクリーンルーム、スパッタリング装置、電子線描画装置、マスクアライナーおよびドライエッチング装置などを用いて、ガラス基板にナノピラーを作成した。ナノピラーのサイズ、間隔を10~2000nmと変化させた4種類のナノ構造体を1枚のガラス基板に作成し、マイクロ流路を作成したガラス基板とを熱癒着により接合した。これによりナノ構造体のサイズのみが異なり、圧力や加熱における熱流束などの実験条件を同じにすることができ、ナノ構造体のサイズと毛管凝縮速度の関係を計測することが可能となった。 ナノ構造体間に凝縮する水のダイナミクスを調べるため、ミラウ型光干渉法を用いた可視化計測法を検討した。上下のガラス基板による屈折およびピラーによる散乱光の影響が大きく、十分な計測精度が得られなかった。 作成したマイクロ流路に純水を導入し、ヒータにより加熱して蒸気を発生させ、蒸気が上面の4種類のナノ構造体で凝縮する様子を光学顕微鏡と高感度カメラを用いて可視化し、凝縮速度を計測した。なお、ピラーの間で凝縮した水による屈折率が変化することから、凝縮水の量を推定した。得られた計測結果から、マイクロスケール構造体での凝縮速度に比較して、ピラー間隔が500nm程度から凝縮速度が上昇をはじめ、250nmの間隔ではで約2倍程度になることが確認できた。このことから、ナノ構造体にって凝縮が促進されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新川崎に設置した加工装置を用いて、ナノ構造体を作成し、凝縮速度の計測する予定であった。しかし平成23年8月、計画停電および節電による機器の停止や装置の再稼働に支障があり、研究を中断せざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた成果をもとにして、ナノ構造体のサイズ、飽和蒸気圧などによる毛管凝縮のダイナミクスを詳細に調べる。調べた結果を、従来の理論であるケルビンの式との比較を行う。また、凝縮水の量および熱伝対により計測したガラス表面温度から、凝縮により放出される熱量を求め、ナノ構造体による毛管凝縮熱伝達を明らかにする。 環境制御型SEMを用いて、作成したナノ構造体の間に凝縮する水の可視化計測法を開発する。ナノ構造体を有するガラス基板を取り付けた環境制御型SEMに、湿度を制御した水蒸気を導入し、ペルチェ素子により観察ステージの温度の制御を行う。特に、湿度、蒸気圧と温度を制御して、空間分解能の最適化をはかり、計測精度の向上を目指す。 本研究で得られた実験結果のデータベース化を行いナノ空間における熱流動の特性をまとめて公開を行っていく。本研究で開発した計測法やソフトウェアを公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ナノ構造体およびマイクロ流路を作成するために、4大学ナノ・マイクロファブリケーションコンソーシアムにて所有しているクリーンルーム、スパッタリング装置、電子線描画装置、ドライエッチング装置および環境制御型SEMなどのナノ・マイクロ加工装置の利用料およびガラス基板などの消耗品を研究経費として計上している。本研究で得られた成果を、積極的に発信するため、国内・国際会議などでの発表の旅費などを国内・海外旅費として計上している。
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