本研究は、マイクロ・ナノ流体工学における粒子画像流速計(PIV)に化学のナノセンサ技術を応用してトレーサを機能化し、新たな多変量流動計測法を創出することを目的としている。化学基が付加された粒子に赤色発光および緑色発光を有する蛍光物質を多重化学修飾することで、粒子にpHや温度といったスカラー量の計測機能を付加した多変量ナノトレーサ粒子を作製する。これを流動計測に用いることで、粒子の移動量から流体の速度が、蛍光発光の色(赤色/緑色)からスカラー量が得られ、同時計測が達成される。 平成24年度は、前年度に見出した課題である修飾行程における粒子の凝集を解決する方法を確立して多変量ナノトレーサ粒子を実現した。修飾法としては、粒子サイズ制御のためにポリスチレン粒子を核として赤色発光の量子ドットをアミド結合により修飾し、さらにpH及び温度計測が可能なフルオレセインイソチアネート(FITC)をチオ尿素結合により修飾する。この際、粒子と量子ドットの混合比および化学反応時間を表面化学をもとに最適化することで、凝集なくトレーサ粒子を機能化することに成功した。多変量ナノトレーサ粒子によるpH計測について較正実験を行った結果、pH4-7の範囲で計測可能であり、粒子径が100-1000 nmの範囲で多変量ナノトレーサ粒子の作製に成功した。これを用いてY字型マイクロチャネルの圧力駆動流におけるpHの異なる溶液の混合場で計測を行った。その結果、混合に伴うpH分布と速度分布が得られ、本研究で提案した多変量ナノトレーサの方法論の有効性をはじめて実証した。
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