本研究の目的は,研究代表者がごく最近発見した新形式の移流項を使用し,従来は達成できなかった移流方程式の超高精度数値計算や,従来は安定に解くことが困難であった移流形方程式の新たな数値計算および理論解析手法の開発に挑戦することである.新形式の移流項は密度が変化する流れ場に対しても輸送量の自乗量保存形を与える事に特徴がある.平成23年度は,自乗量保存形差分と衝撃波捕獲法の混合スキーム,コンパクト差分による高次精度流体解析手法,移動格子の自乗量保存形差分,を構築した.平成24年度は,平成23年度に構築した計算手法の発展および応用・検証計算を実施した.まず,自乗量保存形差分と衝撃波捕獲法の混合スキームを移動格子の差分スキームへと発展させた.検証計算として振動翼周り流れのLESを実施し,実験結果との比較により提案した手法の信頼性を確認している.応用問題として,正弦振動壁を有する2次元正方キャビティ内流れのカオス的混合の数値解析も実施した.また,移動格子の差分スキームにより回転系振動格子乱流のDNSを実施し,回転系乱流に特徴的な準二次元的縦渦構造の発達過程の説明や乱流統計量に及ぼす回転の効果を調べた.スパン方向に進行波状壁をするチャネル乱流のLESでは,進行波状壁による摩擦抵抗低減効果を調べた.さらに,気液混相流の差分スキームを構築し,角柱周りにおける気液混相流の数値計算を実施した.高レイノルズ数の非定常乱流の数値解析では提案された差分スキームをLESに適用する必要があり,それに適したSGSモデルとしてベクトル・レベルの恒等式を用いたグローバル係数ダイナミックSGSモデルも提案している.以上の研究実績は,平成23年度に雑誌論文3報および学会発表6回,平成24年度に雑誌論文2報および学会発表6回,として公表している.
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