研究課題/領域番号 |
23656137
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 剛宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40252621)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 複雑流体 / ゲル / ミセルネットワーク / 自己組織化 |
研究概要 |
当該研究は,実験と数値計算の両面から,ひも状ミセルが形成されるカチオン系界面活性剤水溶液に対イオンである塩を添加した際に現れる自己組織化現象(ゲル化)の工学的利用のための基礎的な知見を得るための研究を行うものである. 平成23年度は,円管流路内のカチオン系界面活性剤水溶液への塩添加によるミセルネットワークゲル生成現象および壁面への付着現象の可視化実験と付着条件に関する実験のデータを整理し,さらに,Hele-Shawセル内の界面活性剤水溶液と対イオン(塩)水溶液の界面におけるゲル生成に伴う界面不安定現象に関する実験を行い,界面形状パターンと諸条件の関係を整理した.界面形状パターンは多岐にわたり,濃度比と界面移動速度に大きく影響されることがわかった.これらの結果から,ゲル化を伴う複雑な流動現象に関する知見を得ることができ,今後の研究の基礎となる知見が得られた. 数値計算では,溶液中のゲル状物質の変形挙動の解析のために,溶液中の高分子液滴の膨潤現象の数値シミュレーションモデルを提案した.本モデルは,ゲル状物質と周囲流体の流れを.二流体モデルで表し,さらに浸透圧の影響を取り入れたもので,流動下のゲル状物質の成長現象を連続体力学的に扱う手法として有用である.また,ミクロ計算モデルとして,フロック形成流体の数値計算モデルを開発した.本モデルをもとにミセルのゲル化モデルへの改良が可能であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験においては,当初予定のデータの収集を行い,複雑な系で現れる現象の各要因について調べるための実験にも着手している.数値計算では,連続体力学手法とマクロシミュレーションの両手法に関する計算モデルを提案した.以上の成果により,当初の研究目的を概ね達成できていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
実験では,比較的簡単な流れ場におけるカチオン系界面活性剤への塩添加によるゲル化挙動を扱い,ゲル化に伴い起きる特異現象に影響を及ぼす要因を調べる.そして,その結果を基にミセルネットワークゲルの生成を利用した機能性発現への応用への可能性を検討する. 数値計算では,ゲルの変形を扱うために粘弾性モデルの適用を検討する.また,現時点では,ミクロモデルとマクロ流動計算とのカップリング計算では,単純な流れ場しか扱えないため,連続体力学的手法を中心に研究を進める.ただし,ミクロモデルの改良については引き続き検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたシリンジポンプについては,研究室で自作した装置で予備実験を行い,その結果をもとに仕様を確定させるために,本年度の購入をとりやめたが,次年度の研究費で購入する予定である. また,次年度経費で,計画の解析用コンピュータを購入するとともに,実験装置の製作費,消耗品費を支出する予定である.また,研究成果を学会発表するための旅費を使用する予定である.
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