ひも状ミセル(界面活性剤)水溶液に対イオンを添加すると、ミセルの絡み合いが生じ、ミセルネットワークゲルが形成される。その結果、種々の複雑な流れ挙動が現れる。これまでの研究では十分に得られていなかった、ゲル化を伴う流動に対する基礎的知見を得るために、本研究では、実験と数値計算の両面から研究を遂行し、次の成果を得た。 実験では、Hele-Shawセル内の指状体成長、ジェット注入流れ、円管内の置換流れを対象に、ゲル化を伴う流れ場における流動挙動を調べた。その結果、注入界面活性剤に対する対イオン濃度が小さいと、ゲル化が十分に進まず、界面の不安定現象が現れることが分かった。さらに、ジェット注入では、界面付近のミセルネットワークが高配向する領域と内部の等方領域が存在する構造を形成することが分かった。また、円管内の置換流れでは、ゲル化を伴う系特有の新しい流動パターンを見いだした。 また、数値計算では、ゲル状物質を扱う数値シミュレーションのための計算モデルとして、バイオフィルムの成長現象、浸透圧の効果を考慮した二流体モデルについて、数値計算プログラムを作成した。そして、これらの手法をゲル化を伴う流れの解析への応用可能性が示唆される結果を得た。
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