研究課題/領域番号 |
23656138
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河原 源太 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50214672)
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キーワード | 乱流 / 多孔質壁面 / 伝熱促進 / 非相似性 |
研究概要 |
前年度に引き続き,平行平板間のうちの一平板が多孔質壁である場合のチャネル乱流における熱・運動量輸送を直接数値シミュレーションにより調べた.流れは,流量一定条件(流れ方向速度成分の空間平均が一定)で駆動されると同時に,内部エネルギー一定条件(温度の空間平均が一定)で内部加熱される.境界条件は滑り無し及び温度一定であり,プラントル数を1とする.以上の条件を設定することにより,流れ方向運動量と熱の平均的な輸送を記述する方程式及び境界条件は相似となる.これらの条件下で,流れ方向とスパン方向にフーリエ級数,壁垂直方向に4次のBスプライン多項式を用いた擬スペクトル法による直接数値シミュレーションを実施した. 両壁面が非貫通の場合(多孔質でない場合)には,平均速度分布と平均温度分布とはほぼ一致し,規格化された平均温度勾配と平均速度勾配もほぼ一致し,運動量と熱の強い相似性が確認された.ところが,一平板が多孔質の場合には,非相似性が現れ,多孔質壁面及び非貫通壁面のいずれにおいても,規格化された平均温度勾配は平均速度勾配より大きくなり,壁面摩擦を抑えながら壁面での伝熱を促進可能であることが明らかとなった.非相似性の程度は,壁面での平均速度勾配と平均温度勾配との差で数パーセントから10パーセントである.したがって,摩擦係数とスタントン数との差にも同程度の非相似性が見られることとなる. 非貫通壁面と多孔質壁面上の乱流の構造にも顕著な相違が認められた.非貫通壁面上には,周知の流れ方向に向いた縦渦構造と低速ストリークが見られる.これらの乱流構造は,圧力揺らぎと壁垂直方向の速度揺らぎとの顕著な相関を発生させない.他方,多孔質壁面上にはスパン方向に向いた渦構造が卓越し,これらのスパン方向渦は圧力揺らぎと壁垂直方向の速度揺らぎとの強い相関を発生させ,この相関が顕著な非相似性を発生することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,多孔質壁面を有するチャネル乱流の直接数値シミュレーションを実現し,それにより種々の多孔率に対する運動量と熱の輸送の非相似性や渦構造の特性の違いを明らかにし,そこから今後の多孔質壁面の導入による非相似的な運動量・熱輸送の制御に関する指針が得られたことから,本研究の達成度は良好であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究費により九州大学情報基盤研究開発センター研究用計算機システム超並列計算機を使用することによって研究計画を実行する.前年度に引き続き,流体の多孔質壁面通過の程度を表す多孔率を変化させ,それぞれの乱流場における非相似性を解析する.また,一平板のみでなく,二平板が多孔質壁面であるチャネルにおける乱流に対する直接数値シミュレーションを実施する.さらに,多孔質壁の導入によって発生するスパン方向渦構造に対する多孔率の影響を調査し,渦構造の非相似性への寄与を定量的に明らかにする.さらに,高効率伝熱促進,すなわち流動抵抗低減と伝熱促進とを同時に可能にするスパン方向渦構造を選択的に生成する多孔質材の内部構造を吟味し,その構造を反映した境界条件を求める.以上の結果から,最適な(最低流動抵抗と最高熱伝達)伝熱促進をもたらす多孔質壁面を決定し,高効率伝熱促進を数値実験で実現する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究費により,九州大学情報基盤研究開発センター研究用計算機システム超並列計算機を使用することにより研究を展開する.また,研究費により外国出張し,研究成果の発表及び海外共同研究者との研究打合せを実施する.
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