前年度に引き続き,多孔質壁をもつチャネル乱流における熱・運動量輸送を直接数値シミュレーションにより調べた.流れは,流量一定条件(流れ方向速度成分の空間平均が一定)で駆動されると同時に,内部エネルギー一定条件(温度の空間平均が一定)で内部加熱される.境界条件は滑り無し及び温度一定であり,プラントル数を1とする.以上の条件を設定することにより,流れ方向運動量と熱の平均的な輸送を記述する方程式及び境界条件は相似となる.これらの条件下で,流れ方向とスパン方向にフーリエ級数,壁垂直方向に4次Bスプライン多項式を用いた擬スペクトル法による直接数値シミュレーションを実施し,他の結果との比較から妥当性を検証した. 両壁面が非貫通の場合(多孔質でない場合)には,平均速度分布と平均温度分布とはほぼ一致し,規格化された平均温度勾配と平均速度勾配もほぼ一致し,運動量と熱の強い相似性が確認された.ところが,一平板が多孔質の場合には,非相似性が現れ,多孔質壁面 及び非貫通壁面のいずれにおいても,規格化された平均温度勾配は平均速度勾配より大きくなり,壁面摩擦を抑えながら壁面での伝熱を促進可能であることが明らかとなった.非相似性の程度は,壁面での平均速度勾配と平均温度勾配との差で数パーセントから10パー セントである.したがって,摩擦係数とスタントン数との差にも同程度の非相似性が見られることとなる. 非貫通壁面と多孔質壁面上の乱流の構造にも顕著な相違が認められた.非貫通壁面上には,周知の流れ方向に向いた縦渦構造と低速ストリークが見られる.これらの乱流構造は,圧力揺らぎと壁垂直方向の速度揺らぎとの顕著な相関を発生させない.他方,多孔質壁面上にはスパン方向に向いた渦構造が卓越し,これらのスパン方向渦は圧力揺らぎと壁垂直方向の速度揺らぎとの強い相関を発生させ,この相関が顕著な非相似性を発生することが明らかとなった.
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