研究課題/領域番号 |
23656143
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澁田 靖 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90401124)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分子動力学法 / シリコン / エピタキシー / CVD / ナノクラスター |
研究概要 |
本研究では,シリコンのプラズマCVD薄膜生成における初期クラスター形成過程を分子動力学(MD)法により解析し,エピタキシャル成長最適条件を導くこと研究目的とする. 具体的には,メソプラズマにおいて,X線小角散乱その場計測により得られた数nmのナノクラスターの存在と低温高速高品質エピタキシャル成長との相関関係を基に,これまで申請者が独自に開発してきたナノクラスターと基板の相互作用を一意に取り扱えるMDモデルを拡張し,クラスター構成原子が衝突・拡散・エピタキシャル成長する全過程を解析する. 平成23年度は,Lennard-Jonesポテンシャルを用い,まず気相Siが凝集する過程の計算を行い,冷却速度・気相Si密度と得られるSiクラスターサイズの相関性について考察した.さらに得られた典型的なSiクラスター構造を初期構造とし,Siナノクラスターの基板への衝突過程の計算を行い,温度・サイズ依存性について検討した.高温・小さいクラスターほどエピタキシャル成長しやすいことを直接確認できた.本研究結果をまとめ,現在,雑誌「Journal of Applied Physics」に投稿中である.また本結果を国際会議IUMRS-ICA 2011で発表し,Outstanding Poster Awardを受賞した. また次年度に向けて計算に使用するポテンシャルの精度を上げるべく,三体ポテンシャルであるTersoffポテンシャルを用いた予備計算を行い,Lennard-Joneポテンシャルで得られた結果と同一の傾向が得られることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,初年度のうちに三体ポテンシャルであるTersoffポテンシャルを用いた計算が出来るようになった.さらに,上記と平行して,Lennard-Jonesポテンシャルを用い,(1)気相SiからSiクラスターへの凝集過程,(2)Siクラスターの基板への衝突過程のMDシミュレーションを行い,定性的ではあるがエピタキシャル成長が容易な条件を同定できたため,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度後半に,ポテンシャルの精度を上げるべく三体ポテンシャルであるTersoffポテンシャルを用いた予備計算を行い,Lennard-Joneポテンシャルで得られた結果と同一の傾向が得られることを確認してきた.Lennard-Jonesポテンシャルでは融点等の物性値が合わないため規格化温度等を用いてきたが,今年度はTersoffポテンシャルを用い,より定量的な解析を行う.またSi単体クラスターのみならず,実際のプラズマプロセスで無視できない水素の影響を考慮すべく,Si-Siボンドに加え,Si-H,H-Hの相互作用も考慮した解析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
水素を含むMD計算は時間刻みを従来の1/10以下に設定する必要があるため,計算負荷が大きくなる.そこで,高クロック数CPUを搭載した計算機を購入予定である.さらに出てくるデータ量が膨大になり,可視化やポスト処理にも計算負荷が大きくなるため,データ処理用計算機も導入予定である. また得られた結果を積極的に国内外学会で発表するため,初年度に比べ旅費の割合が多くなる予定である.
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