本研究では,シリコンのプラズマCVD薄膜生成における初期クラスター形成過程を分子動力学(MD)法により解析し,エピタキシャル成長最適条件を導くこと研究目的とし,メソプラズマにおいて,X線小角散乱その場計測により得られた数nmのナノクラスターの存在と低温高速高品質エピタキシャル成長との相関関係を基に,これまで申請者が独自に開発してきたナノクラスターと基板の相互作用を一意に取り扱えるMDモデルを拡張し,クラスター構成原子が衝突・拡散・エピタキシャル成長する全過程を解析した. 具体的に,平成23年度は,Lennard-Jonesポテンシャルを用い,まず気相Siが凝集する過程の計算を行い,冷却速度・気相Si密度と得られるSiクラスターサイズの相関性について考察した.さらに得られた典型的なSiクラスター構造を初期構造とし,Siナノクラスターの基板への衝突過程の計算を行い,温度・サイズ依存性について検討した.高温・小さいクラスターほどエピタキシャル成長しやすいことを直接確認できた.この知見をまとめ雑誌「Journal of Applied Physics」に投稿し,掲載された.また本結果を国際会議IUMRS-ICA 2011で発表し,Outstanding Poster Awardを受賞した. 平成24年度は,三体ポテンシャルであるTersoffポテンシャルを用い,SiクラスターがSi(100)基板に対してエピタキシャル成長する過程を解析した.この知見を雑誌「Chemcal Physics Letters」に投稿し,掲載された.さらに,Hの影響を調べるべく, Si-HクラスターとSiクラスターによりエピタキシャル成長過程を比較した.この結果をまとめ,論文投稿する予定である.
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