本研究では、2成分蒸気のマランゴニ滴状凝縮における、伝熱面温度分布に基づく凝縮液滴の自発移動現象を適用し、ウイックレスの気液相変化を伴う自発液体移動二相流体ループ伝熱デバイスを創生する。マランゴニ凝縮においては、凝縮液滴は伝熱面低温部から高温部へ自発的に移動することから、外力の存在無しに、凝縮液は蒸発・沸騰部へ供給され、気液相変化熱移動を実現する。本現象を密閉空間二相流体ループ伝熱デバイスへ適用する基礎を確立し、機器としての適用可能性を解明することを目的として、以下の事項を実施した。 気液相変化二相流体ループ伝熱装置の基本構想と設計・製作を実施した。作動流体として水-エタノール2成分混合液・蒸気を封入する構造とした。実験装置の基本構造として、伝熱面に適切な温度勾配を付与するために、従来のマランゴニ凝縮熱伝達率を境界条件に与えた数値解析手法を用いて、伝熱面材質、厚さおよび装置長さをパラメータとして、実験装置の基本構成を設計した。重力の影響を小さくするため、気液相変化二相流体ループを水平設置とした。実際に混合液を実験装置に封入し、加熱部,冷却部長さをそれぞれ20mm,試験部全体の長さを100m,高さ10mm,幅20mm,冷却水温度20℃,流量1L/minの条件において,作動液のエタノール濃度,ヒータ加熱量を変化させて実験した.その結果、水-エタノール混合蒸気の凝縮時の,温度勾配による表面張力差液滴移動現象をヒートパイプの作動液の輸送に適用することで,ウィックレスヒートパイプが実現できることを示した.また、ヒートパイプとしての最大熱輸送量はエタノール濃度が小さくなるほど増加する傾向が見られ,蒸気のエタノール質量分率が0.06において最大値150Wを示し、電子機器の発熱密度と比較して,十分な値の熱輸送量が得られ,機器としての実用性が示された.
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