研究課題/領域番号 |
23656148
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧野 俊郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111941)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生活環境と地球環境の共生 / ふく射環境制御 / 高熱伝導性・高吸放湿性の多孔質壁 / 多孔性バイオマス / 多孔性金属 / ふく射伝熱・対流伝熱 / 室内の生活空間 / 冬の日 |
研究概要 |
本研究は,熱工学の立場から人間の生活環境と地球の自然環境の ほどよい共生 を図ることをめざす萌芽的な研究である.これまで,快適な室内環境を実現するためには空気調和機器(エアコン)が多用されてきた.しかし,エアコンは,その使用電力分とその電力生産にともなう熱を大気に放出し,地球の温暖化を促進する.エアコンへの依存度を最小化しながら快適さを求めるのがよい.本研究では,人体と室内の壁の間のふく射伝熱が 多くの熱工学の研究者の想像を越えて大きいことに注目し,そのふく伝熱を制御する室内壁(壁ユニット)を開発することを目的とする.本年度(2011年度)は,(1)本研究の主要な要素となる高熱伝導性・高吸放湿性の多孔質層(第一壁と呼ぶ)を試作し,その熱・ふく射・物質輸送の物性値(有効熱伝導率・全半球放射率・平衡質量含水率・吸放湿量・湿気伝導率)を測定・評価した.(2)(2011年3月11日の)東日本大震災の発生を受け,熱物性とふく射伝熱の観点から,本研究のふく射環境制御のアイデアを生かし,仮設住宅の暑い夏・寒い冬を乗り切る工夫を日本熱物性学会のホームページにおいて提案した.(3)上記の(2)(の工夫の提案)をより学術的に展開するために,「気温25℃の夏の日は夏日であり,Tシャツ姿で暑い.いっぽう,冬の日には室温25℃の部屋でも,着衣次第では寒い.暑い/寒いは人体とその環境とのエネルギー交換量に依存するが,そのエネルギー交換は,おもに人体表面と空気との間の対流伝熱と人体表面と壁表面との間のふく射伝熱による.」(という研究代表者の定性的な知見)を強調し,簡単な伝熱モデルに基づいて,冬の日の室内の生活空間における人体と空気と壁の間のエネルギー交換に注目して簡単な計算と実験を行い,ふく射伝熱と対流伝熱の寄与を評価し,ふく射伝熱の寄与が大きいことを定量的に初めて示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要部である(【研究実績の概要】における)(1)については,本研究課題の今後の推進のための基礎データとなる物性値を得ることができ,(第32回日本熱物性シンポジウム(2011-11)において)学会発表を行い,雑誌論文への投稿を準備中の段階であり,また(【研究実績の概要】における)(3)については,(第49回日本伝熱シンポジウム(2012-05)において)学会発表を予定しており,「(2)おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2012年度)には,本研究課題の主要部である(【研究実績の概要】における)(1)を基礎として,壁ユニットのシステム性能に注目してその有効性を明らかにし改良点を探る.すなわち,(a)壁ユニットの表面冷却特性・吸放湿特性を評価する,(b)壁ユニットの温湿度・ふく射環境自律制御性能を評価する,(c)壁ユニットに凝縮水が発生した場合の対策・壁ユニットに自律的な放湿ができない状況が生じた場合の再生(リセット)法を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の「物品費」は おもに (「今後の研究の推進方策」における)(a)~(c)の実験に用いる消耗品の購入の費用に,「旅費」はおもに学会発表の費用に,「その他」・「間接経費」はおもに論文投稿・掲載の費用にあてる予定である.
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