前年度の課題として、グローコロナによる確実な反応のための溶液の安定した界面形成があった。これを実現するため、前年度は、エレクトロスプレー現象を生じさせないように、印加電圧モード、電極先端径、電極間距離、および溶液圧力がエレクトロスプレー開始電圧に及ぼす影響を調査したが、今年度は特に、高周波電圧印加した場合の放電および液体挙動について調査した。10 Hz~800 kHzを用いたが、エレクトロスプレー開始電圧は直流のそれよりも低くなることを明らかにした。さらにこの結果はこの周波数域よりも高い場合(1 MHz以上)はエレクトロスプレーが生じない可能性を示唆していた。引き続き調査する予定である。前年度の成果も踏まえてまとめると、溶液挙動に対しては交流周波数と先端径の影響が大きく、1μm 以下の径で約1 MHz以上の場合、エレクトロスプレー開始電圧とグローコロナ開始電圧は同程度になる可能性が示唆された。 また、ハンドトップサイズのグローコロナ発生分析装置を作製した。これはテフロンを躯体材料として、内部室へのガス供給が可能で、設置されたマイクロキャピラリ電極への電圧印加、放電電流測定、試料搬送が可能である。これに購入した高感度分光器を接続し、雰囲気ガス毎のグローコロナの発光スペクトルが安定して取得できることを確認した。その後、ヘリウム雰囲気における試料(主にヨウ化カリウムを使用した)固有のピークを確認した。しかし、明瞭なピーク観察は常時できず、これは雰囲気ガスの純度や試料流量の安定性に関わることと推察された。よって、新たなグローコロナ発生分析装置を設計し作製した。真空度、試料制御、光検出効率の点が改良されている。今後はこの装置を用いて分光分析する計画である。
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