研究課題/領域番号 |
23656152
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高田 保之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70171444)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 接触角 / 沸騰伝熱 / 気泡 / 蒸気膜 / 熱伝達 / 超撥水 |
研究概要 |
超撥水コーティングやテフロン(PTFE)コーティングを格子状に施した伝熱面を作成し,プール沸騰実験を行った.コーティングのパターン化にはフォトリソグラフィー手法を用いた.準備した伝熱面は直径30mmであり,加工パターンは,格子状は3×3,4×4,5×5 mmの3種類,全面超撥水加工面,および鏡面仕上げである.実験は,大気圧のもと,飽和状態で行った.超撥水加工面では,伝熱面の接触角が大きくぬれにくいため,水中でも空気の層が離れない.そのため,はじめに沸騰容器を減圧した後,試験液体である水を注入した.次に減圧状態のまま伝熱面を加熱し約2分間沸騰させて超撥水加工面上の空気を除去し,大気圧に戻した.その後,伝熱面ブロックのヒーター入力をステップ状に膜沸騰まで上昇させた後,下降させた.各点で定常状態において測定した.プール沸騰実験の結果,以下の知見を得た.(1)超撥水面の沸騰には鏡面仕上げのような核沸騰域が存在せず,過熱度がわずか3.0 Kにおいても超撥水面では伝熱面のほぼ全体が蒸気膜に覆われ,膜沸騰のように大きな気泡を発生する.(2)超撥水面と鏡面仕上げの膜沸騰域ではほぼ重なり,これはBerensonの式と殆ど一致する.このことから超撥水面において核沸騰領域は存在せず,低い過熱度から安定な膜沸騰状態になることがわかる.(4)格子状伝熱面では格子の大きさによる伝熱特性に差が見られない,低過熱度域において,鏡面仕上げ面に比べ,いずれの格子パターンでも熱流束が大きくなっており,熱伝達が良くなっている.(5)格子状に超撥水加工した伝熱面では,低過熱度域で熱伝達が良くなり,沸騰開始時のオーバーシュートが見られない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は飽和沸騰を中心に観察を行った.撥水と親水を組み合わせた伝熱面の熱伝達特性は特に核沸騰域で良好であることが分かったことは非常に有用な知見と言える.過冷却状態における蒸気膜沸騰の安定性を理解するには,現象の再現性やミクロレベルでの詳細な観察が必要であり,今年度はその前段階の知見として,有益な情報が数多くが得られた. 次年度は初年度の成果に立脚して,順調な研究の進展が見込める.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,種々の撥水面の準備と沸騰特性評価が中心であったので,今後はサブクール状態での液膜の安定性を中心に実験観察を行う予定である.特に過冷却状態で液膜がどの程度まで安定に存在しうるかは,省エネルギー熱輸送システムへの展開の可否に大きくかかわるものである.そこで,過冷却下における沸騰遷移のメカニズムについてもあわせて調査を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
コーティング剤や構造材といった伝熱面製作のための消耗品や成果発表のための旅費を中心に使用する.
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