研究課題/領域番号 |
23656153
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 厚史 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10243924)
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研究分担者 |
生田 竜也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (70532331)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 熱伝導率 / アモルファスカーボン / 1次元材料 |
研究概要 |
ナノワイヤ材料の軸方向熱伝導はバルクと異なって弾道的性質が発現する可能性がある。具体的には、構造の1次元性や欠陥の少なさによってフォノンの平均自由行程がバルクに比べて長くなることで熱伝導率が上昇したり熱伝導率の試料長さ依存性が現れる。この平均自由行程が大幅に長くなるように構造を人工的に制御することによって、かつてなく高性能な熱伝導材料を開発することを本研究は目的としている。この目的に向かっての第1段階として、カーボン系ナノ材料の構造の1次元性を阻害する因子であるアモルファスカーボンを除去する実験技術の開発を行った。手法としてはオゾンを採用するが、もし狙った局所的地点のみを除去することができれば熱伝導への影響について定量的に評価できる。そこで、酸素雰囲気での紫外線照射およびオゾン発生器の利用について実験を行った。エキシマランプからの紫外線によるオゾンの除去作用に比べて、オゾン発生器からの噴射に加熱したプローブの接触を複合させる方法がより効果的であることがわかった。また、平均自由行程の増加の検証方法となる熱伝導率の長さ依存性の実験については、熱プローブ型センサを利用して試料をイオン液体へ差し込む手法を実験的に検討した。しかしながら、濡れ性が非常にいいイオン液体では試料長さを変化させることは難しいことがわかったので、電界研磨したタングステンプローブをナノ材料に当てて長さ依存性を調べる実験装置を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アモルファスカーボンの局所的除去をドライの環境で可能とする手法を確立したことは今後の実験にとって大いにプラスとなる。当初予定していたイオン液体の利用の代わりに極細タングステンプローブを使えば長さ依存性を計測できることを確認できたので、弾道的熱輸送の研究として全体的には順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度成功裏に開発したアモルファスカーボンの局所除去に共同利用施設での収束イオンビーム加工(FIB)を加えて、カーボンナノチューブとカップスタック型カーボンナノファイバの構造を制御しながらそれぞれ1本での熱伝導率計測を行う。これによって原子構造とフォノンの弾道性を一対一で関連付けることができると考えている。熱伝導率の長さ依存性計測については、今年度の成果であるタングステンプローブの接触手法で行う予定である。1次元性と弾道的熱輸送の関係を世界で初めて実験的に解明することが目標であり、そのための方策を可能な限り試す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験消耗品、共同施設である収束イオンビーム加工装置(FIB)や高解像度透過型電子顕微鏡の利用料、成果発表費用および旅費、実験補助のための謝金等に使用する。
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