研究課題/領域番号 |
23656158
|
研究機関 | 山口東京理科大学 |
研究代表者 |
結城 和久 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (90302182)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 沸騰伝熱 |
研究概要 |
本研究は、ナノ粒子の集積によって発現する極めて強い毛細管現象とマイクロスケールの気孔による積極的蒸気排出の2つの機能を兼備するナノ粒子バイポーラス構造体を伝熱面に設置することで沸騰伝熱促進を図るものである。 研究開始となる平成23年度では、先ず液滴蒸発時における試験体温度の低下を防ぐため、ナノ粒子が施工される試験体のボリュームを増し熱容量を大きくした。これに伴い加熱方法も一新した。更に、現有の高速度カメラおよび購入した動き解析マイクロスコープで撮影可能な可視化体系を確立し、更に、伝熱体の酸化を極力抑制するためArパージ系を導入してAr雰囲気での実験実施を可能とした。これらの装置および可視化体系の改修により、加熱されたナノ加工面上に注射針を使って直径2mm程度の液滴を落下させ、液滴の動的挙動と液滴が蒸発し消滅するまでの生存時間を評価することが出来るようになった。そこで平成23年度では、先ずレファレンスデータを取得するため、ナノ粒子の施工がないBare面での液的挙動を撮影し、動的挙動と蒸発時間について詳細に評価した。今後、各ナノ粒子バイポーラス構造体に対する壁面過熱度と生存時間の関係、すなわち蒸発曲線から濡れ限界温度とライデンフロスト温度を評価し、沸騰伝熱促進に適したナノ粒子バイポーラス構造体を特定する。 一方、研究開始当初に予定していた沸騰付着法によるナノ粒子バイポーラス膜の作製に加え、現在、バイポーラス構造を人工的に制御可能なコロイダルプレス法とスキージ法によるポーラス膜の作製についても評価している。購入したメンブランスフィルターとアスピレーターはコロイダルプレス法で使用する物品である。これは、沸騰付着法で問題となる高温時の膜の剥離を防ぐため、事前に制御されたナノ粒子バイポーラス膜を生成して伝熱面に施工することを目的としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
沸騰付着法によって作製されたポーラス膜の剥離を防ぐため、現在、コロイダルプレス法やスキージ法の導入など、研究開始当初に予定されていなかった手法についても併せて評価しているため。なお、新しい膜生成法の導入については本学・応用化学科の教員のサポートを受け実施している。
|
今後の研究の推進方策 |
可視化を含む実験体系については平成23年度において概ね確立できた。今後、新たに検討しているナノ粒子バイポーラス構造膜の作製法について引き続き検討し、まず、沸騰伝熱促進に適したナノ粒子バイポーラス構造体を特定する。更に平成24年度に予定していた応用実験へ移行し、ナノ粒子バイポーラス構造の工学応用について明らかにする予定である。具体的には、研究室現有のプール沸騰可視化装置に本研究で得られるナノ粒子バイポーラス膜を施工して、沸騰伝熱の向上について議論する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は研究最終年度であり、その殆どは消耗品と成果発表として使用される。・ナノ粒子(酸化チタン): \100000・プール沸騰試験片 : \200000(5セット)・熱電対 : \50000・ヒータ等の消耗品 : \50000・学会参加旅費 : \200000(熱工学コンファレンス等の参加を予定)
|