研究課題/領域番号 |
23656159
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 優 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50344479)
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キーワード | 機械力学 / 建築構造 / 制振 / モニタリング / 風力 |
研究概要 |
本研究では、積雪寒冷地における塔状高層構造物の風応答長期連続観測を実施して、気象条件に応じた動特性の変動を定量化し、制振装置の設計・耐風設計・構造ヘルスモニタリングに資する新たな知見を得ることを目的とする。この目的に従い、昨年度に構築した風応答長期連続観測システムは安定的に稼働し、メンテナンス時以外一度も停止することなく、1年間にわたる振動データを連続収録した。また、年度の後半には建物内の無線LANおよび外部とのネット接続としてWiMAX回線を組み合わせて、遠隔地からの計測システムのモニタリングおよびデータ回収を可能とした。計測データの分析からは、構造物の水平方向の固有振動数が概ね0.5Hzであることと、構造物の固有振動数が夏季には低く冬季には高いこと、および年ごとに徐々に低くなっている傾向を抽出した。これは固有振動数と気温との相貫関係が強いことを示している。また、地震時の固有振動数も低下しており、固有振動数に振幅依存性があることも確認できた。ただし、いずれの変化も制振装置の効果を低減させるほどのものではなく、振動に対する人の知覚確率には影響しないレベルであった。一方、減衰定数については、固有振動数のような明確な変動傾向は見られなかった。以上の成果については、平成24年8月に韓国で開催された構造物の風応答に関する国際会議で発表した。来年度も計測を継続しデータを分析することで、ここで見出した動特性の変動の再現性について確認したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計測システムはメンテナンス時以外一度も停止することなく、1年間の連続継続を行うことができた。ただし、モニタリングシステムについては電波の状況により接続できないことがあるが、計測システムの稼働には問題ない。
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今後の研究の推進方策 |
計測システムとモニタリングシステムが構築できたので、昨年度に引き続き振動測定データの蓄積を図る。また、現段階までに回収した測定データからは興味深い結果が得られており、データ分析プログラムの拡充によって多面的なデータ分析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品の購入はすべて終えたため、次年度はデータ回収とシステムメンテナンスに必要な旅費・謝金、遠隔地からのモニタリングのためのネット接続料、成果発表に必要な登録料・旅費が主要な使途である。
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