強力超音波技術は、医療・加工・化学における超音波応用や、圧電トランスや小型アクチュエータ等の電子デバイスへの応用に大きく貢献している。これらの応用範囲を拡大していくためには、超音波デバイスの振動速度限界の要因と言われている振動モードの節部での応力集中を緩和する必要がある。そこで、本研究では、従来の単一振動モード型振動子における超音波出力限界を打破するため、新たに多重モード型振動子を提案し、ハイパワー出力時に励起される非線形振動を打ち消すことで、応力集中を軽減させると同時に分極反転現象を抑制することを目指した。 まず、通常のランジュバン振動子の両端部分を段付構造にすることにより、1次と3次の共振周波数が1:2になるように、有限要素法解析を用いて設計した。この設計を基に振動子を試作し、21.64kHzと43.53kHzと共振周波数比が2.01となる振動子を実現した。振動モードの節点における応力は、先端部分の振動速度に比例するので、試作した振動子における振動速度限界速度について実験を行った。その結果、1次モードに対応する駆動電圧のみを入力した場合、1.5m/sの振動速度で飽和する現象が見られ、それ以上の入力電圧を加えても振動速度は上昇しなかった。次に、3次モードに対応する駆動電圧を、1次モード駆動電圧に対する位相と振動振幅比を変化させながら入力していった。その結果、例えば1次と3次の入力電圧を共に240Vとして、位相差を140度にした場合、1.7m/sの振動速度を得ることができた。この結果から、提案手法のように多重モード型振動子によって振動モード制御を行って応力集中を避けることで、飽和振動速度が上昇することが明らかとなった。この技術を発展させることにより、現在用いられている超音波応用技術のさらなるハイパワー化が可能になると期待できる。
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