研究課題/領域番号 |
23656165
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
田中 信雄 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (70305423)
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研究分担者 |
岩本 宏之 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (90404938)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 能動騒音制御 / パラメトリックスピーカ / 波面合成 |
研究概要 |
能動騒音制御が世に普及しない理由は,制御音源の音場拡散性にある.すなわち,ある箇所の静粛性を追求すると他所での騒音増大現象がついてまわるからである.この問題を解決する手法のひとつに超指向性音源であるPAL(Parametric Array Loudspeaker)の援用がある.PALの欠点のひとつは,その高すぎる指向性にある.すなわち,対象点のみを静粛化したとしても,ターゲットの奥に遮へい物が存在すればサウンドビームは反射してしまい,他所に影響を与えてしまう.したがって,比較的狭い閉空間場のような領域においては,PALの有効性は低い.そこで,提案研究では,操舵機能とビーム長の調整機能を有する新しいPAL,すなわちESPAL(Extendable and Steerable Parametric Array Loudspeaker)を開発する.さらに,サウンドビーム内の波面が騒音源と一致するような波面合成法を確立することにより,悪影響を惹起しない制御音源を構築する平成23年度は,PALによる制御領域の拡大を目指した.手法としては,システムの多チャンネル化や,音源の放射音響パワーを抑制する広域制御法が考えられるが,前者はシステムの複雑化や不安定化,演算量の増加が伴う.また,後者においては,一般的に制御音源を騒音源から半波長以内に設置することを必要とするが,騒音源の設置環境によってはこれが困難な場合が考えられる.そこで,音源素子を同心円状に配置し,適切な遅延時間を与えて音源素子を駆動することで,騒音源から離れた位置にある制御音源から騒音と同形状の波面を形成することを試みた.その結果,騒音に対し同形状の波面をもった制御音を重ね合わせることで,誤差センサ点での音圧を抑制した結果その周辺も広範囲にわたって音圧が抑制されることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り,本研究課題の最も重要な目的は,従来のPALにサウンドビームの操舵・伸縮・波面合成の機能を付加することにある.平成23年度においては,波面合成に焦点を置き,その有用性を数値解析および実験により明らかにした.サウンドビームの操舵については,我々の研究室においてすでに技術が確立されているので,残りの研究期間2年でサウンドビームの伸縮法の提案および操舵・伸縮・波面合成の機能を統合することになる.したがって,制御系の簡素化などの課題は残るものの,3年間の研究期間において研究目的の1/3がほぼ達成されたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り,平成23年度においては,PALにおける波面合成法を提案した.平成24年度はサウンドビームの伸縮法の検討を行う予定である.具体的には,サウンドビームの操舵制御法とPALの二周波数駆動法を組み合わせることで,操舵機能に加えて可聴音ビームの長さを制御する手法を提案する.例えば,40kHzと41kHzの超音波ビームが,左右対称の角度で操舵されているとする.この場合,その差音となる1kHzの可聴音が生成されるのは,超音波ビームが重なり合う三角形の領域のみである.したがって,超音波ビームの指向角度が0度に近づけば,可聴音ビームは長くなり,逆に指向角度が大きくなれば,可聴音ビームは短くなる.この原理と既に確立されている指向性制御を組み合わせることで,指向角度とビーム長を同時に制御することが可能となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は音源素子(ピエゾ素子)を駆動するアンプを購入・あるいは制作する予定であったが,大学より研究費の追加配分があったため,当該研究費でこれを購入した.これが,剰余金発生の主な理由である.また,前述の通り,平成24年度においてはサウンドビームの操舵制御法とPALの二周波数駆動法を組み合わせたサウンドビームの伸縮法の検討を行う予定であるが,これを実現するためにDSPボードや評価用の超音波対応マイクロホンを購入する予定である.さらに,国際会議や国内学会のための参加費・旅費等にも支出する予定である.
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