研究課題/領域番号 |
23656166
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
井上 喜雄 高知工科大学, 工学部, 教授 (50299369)
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研究分担者 |
劉 涛 高知工科大学, 工学部, 助教 (50449914)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 機械力学制御 / マスタースレーブ / エネルギー回生 / 力覚 / ウエアラブル / 義手 / 医療 / バイラテラル |
研究概要 |
従来にはなかった新しい概念である「エネルギー回生メカニズムを用い,バッテリー交換が不要で力センサなしでも力覚を有する軽量のマスタースレーブ」の基礎技術を確立し,その技術の義手やウエアラブルなリハビリ支援装置などへの応用の可能性を探るとともに,バイラテラルなマスタースレーブとしての機能を付加することにより,幅広い分野へ応用が可能な技術に育てることを目的としている. 初年度の平成23年度は,以下のように研究を進めた.まず,提案するマスタースレーブシステムの基礎式を機械―電気連成系での連立微分方程式として設定し,それらを変形した結果,電気回路のなかの電気抵抗で消散されるエネルギーのためにマスターとスレーブの間に速度差が生じること,その効果を近似的に等価な 機械系に置き換えれば,それは相対速度に対する減衰にあたることを示した.また,その減衰により力が伝達されるとともに,その減衰定数は電気回路の抵抗が小さいほど大きくなることを明らかにした.そのような理論の妥当性を確認するために,導出した理論式を用いて,同一の特性を有する2個のDCモータを用いた1次基礎実験装置を設計,製作し,実験により提案するマスタースレーブ装置に関する理論が妥当であることを確認した. また,相対速度をフィードバックし,外部より,電気回路で消費されるエネルギーを補充してやれば,その装置で 発生する速度差はほぼなくなることを示した,次に,異なった特性を有するモータを用いてバッファとしてのバッテリーを用いることにより,バッテリー交換などによる外部からのエネルギー補充が不要なマスタースレーブ装置の実現が可能かどうかの理論的検討を行い,限定された条件ではその可能性があることを確認し,2次実験装置の設計を完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論的観点からの作動メカニズムの検討を完了し,1次基礎実験装置の設計・製作・実験については計画通りに進んだ.外部からのエネルギー補充を全く行わない2次基礎実験装置については,理論的検討を完了して実現の可能性があることを示すとともに,理論検討の結果をもとにした実験装置の設計を完了した.2次基礎実験装置の製作および実験を積み残したが,数値シミュレーションによる検討や1次基礎実験装置を用いた予備実験などにより2次基礎実験についてはおおよその見通しが得られていることから,ややおくれているとはいえ,問題なく取り戻せると考えられ,当初計画での24年度実施予定の項目も含めて,すべて24年度内に完了する計画である.また,24年度実施予定の義手の実験装置については,すでに1次基礎実験装置を用いた実験と数値シミュレーションに予備検討を始めているいる. したがって,(3)としたが(2)に近い(3)であると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に積み残した2次基礎実験装置の試作・実験(その分予算も残った)については,設計は完了しているので,早期に試作を終えられるように段取りして,すぐに実験にとりかかれるようにする予定である. 当初計画での24年度実施項目である義手に関する検討については,すでに製作済みで実験も完了している1次基礎実験装置を用いて実施した予備実験で得られた結果を参照し,その方向性についてはすでに検討を始めている.したがって,義手に関しても可能な部分から2次基礎実験と並行して装置の基本設計を進める予定である. 2次基礎装置の製作および実験が完了すれば,2次基礎実験装置を用いて技手に関する予備実験を実施し,前述の検討結果とあわせ,義手に関する検討を加速する計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費では,積み残した2次基礎実験装置の試作および今期に予定していた義手の試作のための構造・電子部品,ならびに計測,制御ための装置,結果を評価するのための装置などが中心である.また,義手の実験では被験者への謝金も計画している. また,非常に挑戦的なテーマであり,面白い結果が得られれば,研究成果を国際会議などで積極的に発表したい考えている.さらに,提案するマスタースレーブ装置には,外部エネルギーが少ない,ウエアラブルに使用できる,バイラテラルである,力センサなして力覚を有するなどの多くのおもしろい特徴を有していることから他の用途にも使える可能性,また大きく発展できる可能性が潜在していると考えられるので,その調査のための旅費も予定している.
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