研究課題/領域番号 |
23656171
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 真正粘菌変形体 / 個体発生的時間スケールの適応 / 実時間適応 / 多重時間スケールの適応 / 可変弾性要素 |
研究概要 |
本研究では,行動主体の身体の力学的特性を時空間的に改変することから生み出される,個体発生的時間スケールでの自己組織的な適応様式に主たる焦点を当て,その発現機序の学理の究明とハードウェアでの実現方策の検討を試みる.具体的には,原初的な生物である真正粘菌変形体の形態変形現象に着想を得て立案した,形態変化よりも速い時間スケールで行われる運動が生起する力学場が,環境適応的な形態の形成に不可欠であるという作業仮説に基づき,圧縮材にも張力材にもなり得る可変弾性要素を用いて,生体構造を縮約したカリカチュアモデルであるテンセグリティを構成する.そして,可変弾性要素群の駆動から生起する力学場に適合した形態が創発するための秩序形成ロジックの抽出を目指す. 本年度の成果を以下に具体的に示す:1) 真正粘菌変形体が示す多様な時空間振動パターンとそれらパターン間の自発的遷移現象の数理モデリングを行い,シミュレーションならびにロボットを用いて再現した.2) 真正粘菌変形体を柔らかな培地に置き,その培地を繰り返し伸展させて形態変化を観察した.伸展のありなしで真正粘菌変形体の形態に優位な差が生じることが明らかとなりつつある.これは世界で初めて観察された新奇な現象であり,真正粘菌変形体の形態変化の発現機序解明に寄与することが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個体発生的時間スケールの機序解明のために,真正粘菌変形体を柔らかな培地に置き,その培地を繰り返し伸展させるという,これまでに報告されていない実験を開始することができた.まだ初動段階ではあるが,新奇な現象の存在が示唆されるような実験結果が得られつつある.
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今後の研究の推進方策 |
第一に,粘菌の伸展実験を通してメカノセンサからの刺激によって自己組織的に形成される形状の観察を引き続き行う.そして,新奇な現象の発見を目指す. 第二に,原形質量保存則を実装した粘菌振動子ロボットが示す多様な時空間振動パターンの背後にある力学構造を解明することである. 第三に,徘徊や誘因刺激への走性を状況依存的に切り替えて動き回る粘菌型ロボットの実現である. 第四に,粘菌振動子間で原形質をやりとりするチューブのコンダクタンスをゆっくりと改変する,遅いダイナミクスに基づく適応メカニズムを実装し,多重時間スケールに基づく適応メカニズムの実現を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに発生した未使用額であり,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.
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