研究課題/領域番号 |
23656182
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
橋本 稔 信州大学, 総合工学系研究科, 教授 (60156297)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 運動支援 / 高分子ゲル / 可変剛性 / アシストスーツ |
研究概要 |
積層型ポリ塩化ビニル(PVC)ゲルを用いて従来の歩行アシスト装置に比べ飛躍的に軽量化した歩行アシスト装置を開発する基礎技術を確立することを目的として研究を行っている.平成23年度は,可変剛性スパッツに用いる積層型PVCゲルの製作とその剛性変化について測定を行い,可変剛性スパッツを実現するための基礎技術を確立した.具体的は,次の通りである. 可変剛性PVCゲルを用いた下肢スパッツを開発し,電場を加えたときの剛性変化により大腿部に力を加えて,股関節の運動を補助し,歩行をアシストする.大腿部の運動と可変剛性PVCゲルを拮抗させて配置し,足を前方に振り出すときは,前部のゲルを,指示脚になっているときには後部のゲルの剛性を高くすることで保持する. この目的のために格子状の突起をつけたPVCゲルを作製し,この形状のゲルを電極で挟み込み,単位構造を形成した.この単位構造を積層することにより,積層方向の剛性を制御できるシート状の可変剛性ゲルを構成した.ポリ塩化ビニル(PVC)に可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を混ぜ,溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を加えて溶解した.これを短冊状に切断し,ステンレス箔を用いた電極で挟み込むみ,積層させて可変剛性PVCゲルを作製した. この積層型PVCゲルの剛性変化を測定した結果,電場を印加しない場合に比べ電場を印加した場合は剛性が5倍以上大きくなっていることが分かった.これにより,歩行アシストのためのス可変剛性パッツを実現する見通しが得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では平成23年度には,可変剛性PVCゲルの製作と,PVCゲルを組み込んだ可変剛性スパッツの試作を行う予定であったが,可変剛性スパッツの試作については実施できなかった.これは,可変剛性PVCゲルの製作において当初想定していなかった問題が発生し,その解決に時間を要したためである.積層PVCゲルには引っ張り力が作用し,それにより積層構造の層間剥離が生じてしまうことが分かった.この問題を解決するために積層PVCゲルの側面をPVCゲルで覆い,剥離が生じないように工夫した.これにより剥離せずに剛性変化を得ることができるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
上記のように平成23年度は当初計画に比べやや遅れたが,平成24年度は23年度未達成課題をまず実施し,その後当初の24年度計画を実施する予定である.具体的には次の通りである. まず,23年度に製作した可変剛性PVCゲルを組み込んだスパッツを製作する.その後,このスパッツの剛性制御法を確立し,その有用性を被験者による実験により検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,可変剛性PVCゲルスパッツを組み込んだスパッツを製作することになっていたが,上記理由により研究の進捗がやや遅れたことにより,次年度実施することとなったため,次年度使用額が生じた.平成23年度の未使用分(次年度使用額)を用いて,まず可変剛性PVCゲルを組み込んだスパッツの製作を行う.その後,平成24年度研究費を用いて,当初計画通りに可変剛性スパッツの剛性制御装置の製作と検証実験を実施する計画である.
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