研究課題/領域番号 |
23656183
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
江上 力 静岡大学, 工学部, 教授 (70262798)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 微粒子 / 顕微鏡 |
研究概要 |
本提案手法は直径数百ナノメートルの微粒子単体の表面及び内部の光学定数分光計測を目指すものである.初年度であるH23年度はベクトリアル偏光干渉共焦点顕微鏡の最適化設計を行った.ジョーンズマトリックスモデルを利用し,微粒子からの異方性散乱を理論的に計算した.被測定物体のバックグラウンド(光学的に均一な等方性領域からの散乱)信号を参照光との偏光干渉ベクトリアル差分計測により強制的に抑制することで極微小領域に生じる僅かな感受率変化をコントラストエンハンスト画像として再生することができる.同偏光干渉計にはマイケルソンタイプの光学系を利用する.共焦点レーザ顕微鏡内にマイケルソンベクトリアル差分偏光干渉系を構築するには,光軸近傍,焦点近傍の電界ベクトルについてのみベクトル差分を実現可能な偏光干渉系を設計する必要がある.しかも多波長同時励起が可能な光学系を目指すため,多波長下での各種収差条件(色収差,波面収差等)を考慮した光学系の設計が非常に重要となるため,それらパラメータを考慮し最適な光学系の条件を算出した.以上の最適化設計によりコントラスト分解能を大幅に高めることが可能であることを示唆する理論的な結果が得られた.それら得られた成果はイタリアで開かれたInternational Conference on Microelectronics, Optoelectronics, and Nanoelectronicsにて発表し,異分野である環境分析の研究者からも強い関心を頂いた.これまで微粒子の物理・化学計測はある程度マスとしてのマクロな量でしか計測できなかったため,DDS(drug delivery system)応用のみならず環境計測へも十分応用が期待できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度の科学研究費予算が大幅に減額されるかもしれないとの報道があり,本来必要な高価な光学部品等の購入を当初控えて研究を行った.そのため再生照明系の基本形を構築する実験的な領域で若干の遅れを生じた.結果的にはあまり予算支出を伴わない理論的な領域での研究を中心に行いある程度の成果を得た.次年度は光学系構築の遅れをどこまで取り戻せるかが重要である.
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今後の研究の推進方策 |
H23年度で若干おくれを被った再生照明系の構築をまず最初に手がけ,続いて当初から予定していたベクトリアル偏光干渉共焦点レーザ顕微鏡による多波長3次元分光システムの構築に着手する.標準化サンプルを使って構築したシステムのコントラスト分解能(CTF)を測定し,同システムの性能評価を行う.理論的に予測される理想的な値にどの程度まで近づけることができるかが第一の課題である. H24年度では次に示す実際のシステムを構築する.このシステムの基本は共焦点光学系でその中にベクトリアル偏光差分干渉系を含んでいる.位相情報を推定する強度干渉系とχ(3)情報を推定するベクトリアル偏光差分干渉系の機能を共に備える.参照信号と均一バックグラウンドからの非線形散乱信号とのベクトル差分を極力ゼロに抑え,不均一ナノ領域から生じる僅かな差分ベクトル変化をインバージョン処理することによりχ(3)の分布情報を3D影像化する.物体への非線形分極励起は入射集光プローブ光自体が担い,同光は物体操印機能も有する.その際,DLPレーザビームスキャナやナノピエゾステージを使ってプローブ光をスキャンし,χ(3)テンソル成分による多波長3次元分光を試みる.本システムはナノ物体の空間的な非対称性によって僅かに生じる非線形分極からの偏光ベクトル差分量を検出するため,総パワー数mW程度のLDレーザ光源があれば十分であるが,3次元χ(3)分光を実現するためには同顕微鏡内への共鳴多波長レーザ光源の導入を容易にする必要がある.当研究室は既に近赤外から近紫外波長域に発振線を持つ光源を既に多数所有しており,DDSが示す僅かな線形吸収量χ(1)に応じて最適な励起光源・波長を選択して使用する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記"現在までの達成度"の項目にて記述したが,H23年度に報道された大幅な予算減の可能性を危惧して物品購入を見合わせていたため,比較的大きな予算を使用できずに24年度に繰り越してしまった.そのため次年度は今年度購入を予定していた若干高額な各種収差補正光学部品や電子部品を購入する予定である.今年度は特に多波長光源導入を目指した基本光学系の構築を試みるため,それに関する各種部品においての支出を計画している.得られた当初成果を国内外の学会や学術雑誌にて積極敵に発表する予定である.
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