本提案手法は直径数百ナノメートルの微粒子単体の表面および内部の光学定数分光計測を目指すものである.助成期間3年間でベクトリアル偏光干渉共焦点顕微鏡の最適化設計と実際に作成したシステムの評価を行った.ジョーンズマトリックスモデルを利用し,微粒子からの異方性散乱を理論的に計算した.被測定物体のバックグラウンド(光学的に均一な等方性領域からの散乱)信号を参照光との偏光干渉ベクトリアル差分計測により強制的に抑制することで極微量領域に生じる僅かな感受率変化をコントラストエンハンス画像として再生することができる.同偏光干渉計にはマイケルソンタイプの光学系を利用する.共焦点レーザ顕微鏡内にマイケルソンベクトリアル差分偏光干渉系を構築するには,光軸近傍,焦点近傍の電界ベクトルについてのみベクトル差分を実現可能な偏光干渉計を設計する必要がある.しかも多波長同時励起が可能な光学系を目指す為,多波長下での各種収差条件(色収差,波面収差等)を考慮した光学系の設計が非常に重要となるため,それらパラメータを考慮し最適な光学系の条件を算出した.以上の最適化設計により,コントラスト分解能を大幅に高めることが可能であることを理論的に証明した.また,この理論に基づき,実際に各種空間周波数をもつナノ微粒子群に対して3次元計測を行い,通常の共焦点顕微鏡のコントラスト分解能特性の大幅な向上を達成した.得られた成果はNonlinear Optics 2013(Hawaii)とInt. Conf. on Experimental Mechanics (ICEM) 2013(Bangkok)にて発表し,非線形光学分野の研究者や電子機械分野の研究者から強い関心を頂いた.当方の開発した顕微システムはDDS(drug delivery system)応用にみならず,各種環境計測へも応用が規定できることが分かった.
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