研究概要 |
印加圧力一定下での赤血球のマイクロ流路通過時間は,赤血球の硬さと赤血球の大きさの影響を強く受ける.この原理に基づき,名古屋大学工学研究科マイクロ・ナノシステム工学専攻にて試作されたマイクロ流路内蔵チップ(連携研究者新井史人)内に大阪大学医学部循環器系内科より提供いただいた血液(連携研究者山本一博)を生理食塩水で50倍希釈した上で,一定圧力を加えてマイクロ流路内に流し込,位相差顕微鏡に高速画像処理ボードを内蔵した高速ビジョンシステムを組み込んだ観察装置(研究代表者金子真)を用いて赤血球のマイクロ流路通過時間の実時間計測を行った.視覚的に赤血球の硬さが一目で認識できるように通過時間と細胞の大きさとの関係を硬さ評価マップ上に表示するようにした(研究分担者東森充).赤血球のマイクロ流路出入り口にソフト的にウィンドウを設けウィンドウ内輝度値変化から,細胞の到着時刻を判定し,出入り口の到着時刻差から通過時間を算出した.またマイクロ流路内に同時に複数の赤血球が入っている状態を認識するためのオンラインソフトを組み込み,単一赤血球状態が疑わしいデータはすべて破棄し,信頼性の向上を確保した.さらに赤血球がマイクロ流路内を通過する様子をシミュレーションし,特に赤血球がマイクロ流路入口での変形時間が意外に大きいことを確認した(研究分担者山口康隆).最終的に,健常者と患者の血液を使って,赤血球の通過時間を調べ,両者の間に統計的有意差を確認し(研究代表者金子真),今後の臨床応用へ向け,貴重なデータが提供できたと考えている.
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