研究課題/領域番号 |
23656189
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩坂 正和 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90243922)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 磁気分離 / 二酸化炭素 / 磁場効果 / 凍結プロセス / 反磁性 |
研究概要 |
超伝導磁石の5~10テスラ(T)級の強磁界空間における二酸化炭素の輸送特性を解明するための実験系の構築と磁界形状に依存した二酸化炭素の流れのモード解析を進めた.円筒状の磁界空間内における二酸化炭素流の観測のためのCCDカメラを組み合わせた二酸化炭素フロー・セルの作成を行った.また,液体中における二酸化炭素の輸送速度に対する勾配磁気力効果を解析するため,液体クロマトグラフィー的な流体フローを送液ポンプで制御しつつ,分光測定システムと二酸化炭素指示薬(BTB溶液)により,磁界空間から送出される液体中の二酸化炭素濃度計測を実現した.CO2ガス溶解水溶液にさらにO2ガスあるいはHeガスを導入し,5T磁石の勾配磁界を通過する水流と勾配磁界中心から分岐する水流の2出力における二酸化炭素濃度変化を比較した.Heガス導入は磁界と無関係にCO2ガスの水中輸送速度を増加させた.一方,O2ガス導入を行った場合,勾配磁界印加によって勾配磁界中心での分岐水流へのCO2ガス濃度増加が顕著に起こった.次に,気相での冷却二酸化炭素ガス(エアロゾル)が勾配磁界を通過する流れの観測を行った.磁界中で実体観察可能なCCDカメラシステムの再構築を行い,勾配磁界中での人参加炭素と酸素ガス混層流での二酸化炭素の流れの可視化を行った.超伝導磁石内部および500mT永久磁石の約200T2/mの勾配磁界空間におけるCO2ガス(エアロゾル)の白煙ストリーム速度は,常磁性気体(酸素ガス)濃度に依存して変化した.すなわち,二酸化炭素発生源に勾配磁界を設置した際,常磁性ガスをCO2ガスキャリアとして有効利用できることが明らかとなった.本研究初年度の最後に,モーゼ効果型凍結磁気分離カラム(常磁性物質(塩化マンガン)含有層(ゲル)をクロマトカラム内に形成させ磁気力を与えるシステム)の設計を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した4つの大項目の中で,以下の3項目に関し1)と3)に関し,査読付き国際誌に成果論文を1件公表し,ほぼ研究目標を達成する見込みを得ることができた.また,項目2)に関して基礎的検討設計に着手できたため,おおむね順調に研究を進められていると自己評価した.項目1) 水相および常磁性物質含有ゲルを凍結固化させるプロセスにおいて,二酸化炭素分子集団の凍結分離・濃縮効果を定量的に求め,実験および数値解析の両面から二酸化炭素濃縮条件を把握する.項目2) 大気中の二酸化炭素の直接冷凍・磁気分離回収法,および,モーゼ効果型反磁性磁気圧カラムを検討・開発する.項目3) 超伝導磁石を用いた実験と平行し,0.1T~1T程度の磁束密度の永久磁石を用いた局所高勾配磁界空間での二酸化炭素の輸送特性の解析も進める.
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今後の研究の推進方策 |
製作した凍結磁気分離カラムを用いた実地想定実験を進める.超伝導磁石および永久磁石に設置された凍結磁気分離カラム内での二酸化炭素輸送特性の評価を行う.大気圧中の二酸化炭素濃度条件での実験,および大規模発生源を想定した濃度条件での実験を行い,磁気圧カラムのoutlet部での二酸化炭素濃度を分光手法および圧力計測により評価し,水中での二酸化炭素濃度の濃縮効果を実験および数値解析の両面から把握する.解決項目として,常磁性物質層を通過した二酸化炭素の濃縮の度合いと評価が挙げられる.平成23年度に行った二酸化炭素検出センサと差圧計をシステムによる二酸化炭素分離モニタリングに加え,さらにH24年度に導入する小型分光器による二酸化炭素分離の時系列計測を行う.分離した二酸化炭素を定量的計測するためのBTB溶液を内包した光学セルを開発する.以上の措置のため,「二酸化炭素用磁気分離回路部品」の中に,新たに小型分光器を新たな購入物品として追加する.また,二酸化炭素の小型冷凍磁気分離プレートの検討も行う.磁界中心に二酸化炭素の通過するパスを常磁性物質層で形成させ,低磁界側に二酸化炭素の集積部位をつくる条件を明らかにし,大気中の二酸化炭素の直接冷凍・磁気分離回収法として結実させる開発に挑戦する.マイナス約80℃に冷やした回収プレートに接触した二酸化炭素ガスは固化し粉末状の付着物になるが,プレート上に分布する勾配磁界下では,二酸化炭素粉末周囲の常磁性酸素の働きにより磁界中心方向へ二酸化炭素のドリフトが生じる.この原理を積極的に利用して,回収プレートの真ん中に存在する穴を通して二酸化炭素を粉末状態で磁気濃縮・回収するガス流体回路の作成を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の二酸化炭素分離実験では,主にガス輸送特性評価を行うことに集中し,具体的な実地に即した二酸化炭素分離カラム・分離プレートの試作機の作成は次年度に行うこととしたため,当初の経費との差額が発生した.平成24年度には,二酸化炭素分離カラム・分離プレートの試作を具体的に行う.また,23年度に二酸化炭素濃度評価に用いた時間分解高感度微弱光計測装置を用いずとも,簡易的に二酸化炭素ガス輸送を評価する手法を確立するため,H24年度には小型分光器導入の使用計画を追加する.この小型分光器による二酸化炭素分離の時系列計測システムも構築する.分離した二酸化炭素を定量的計測するためのBTB溶液を内包した光学セルを開発する.以上の措置のため,「二酸化炭素用磁気分離回路部品」の中に,新たに小型分光器を新たな購入物品として追加する.
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