研究課題/領域番号 |
23656190
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
居村 岳広 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (30596193)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ワイヤレス電力伝送 / インピーダンスマッチング / パワーエレクトロニクス |
研究概要 |
本研究は,『パワーエレクトロニクスによる電磁共鳴型ワイヤレス電力伝送の制御技術に関する研究』と題し,アンテナ理論先導型の電磁共鳴技術に対し,パワーエレクトロニクスの適応という新しいアプローチを行い,新しい学術分野を創造することが目的である。本研究は2年計画により行っている。初年度(平成23年度)は理論と解析,次年度(平成24年度)は実証実験という2段階で計画されている。インピーダンスマッチングをパワーエレクトロニクスでおこなうというチャレンジングなテーマであるが、本年度はその可能性について、再度、電源側と負荷側の両面から検討を行なった。その結果、特に負荷側での本技術の適応において、一定の成果を得られる見通しを早い段階から得られたので、本年度は負荷側の研究に注力した。負荷側のインピーダンスを降圧チョッパのデューティー比を変えることによりインピーダンスマッチングができることが示せた。素早く制御を行えること、そして、負荷変動の大きく、つまり、インピーダンスが激しく変化する電気二重層キャパシタにおいても問題なく充電できることを示せた。一方で、電源側のインピーダンスマッチングに関しても、準備を進めている。電磁界解析用サーバの導入で、100kHz以下のアンテナの解析が安定的に、かつ従来よりも短時間で解析できる環境ができ、磁界共鳴方式で80kHzまで周波数を下げたアンテナを設計し、かつ、作成することも出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
『パワーエレクトロニクスによる電磁共鳴型ワイヤレス電力伝送の制御技術に関する研究』という研究テーマであったが、当初検討していた電源側への適応より、負荷側への適応の方がより早く見通しが立ったため、また、複数給電に際しては、負荷側制御は非常に大きな力となることから、負荷側への本技術の適応に注力した。そのため、想定以上の早さで、パワーエレクトロニクスによってインピーダンスマッチングが行える事の証明についてある一定の成果を得ることが出来た。また、負荷側でのパワーエレクトロニクスへのインピーダンスマッチング適応に関しては、整流後のDCにおいて適応できることがわかったため、これまでこだわっていたkHzアンテナの必要性も負荷側制御に関しては不要であることも実証できた。つまり、高周波である13.56MHzにおいてもkHz同様に本技術を適応させることが出来た。当然ながら、13.56MHzを整流する事による効率悪化への影響はあるが、デバイスの進化によって補える事と想定される。一方で、電源側への適応のための準備も着実に進んでいる。流石に、電源側では、MHzでのパワーエレクトロニクスの適応は現時点では困難なため、kHzで行なう。高速動作するインバータ用のFPGAの環境整備や100kHzアンテナ製作の完成など、24年度に向けての準備も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
負荷側制御に関しては、多くの知見を得られたが、負荷側に関しては理想状態での検証であり、例えば、複数負荷が同時に制御を行なった場合などの、実際の使用場面に則した検証を行なう。一方で、電源側での制御という課題も当初計画の通り存在している。これに関しては、当初の予定通り、電源として高周波インバータの作成を行う。電源については,kHzで動作するアンテナのインピーダンスマッチングをPWM制御でおこなうために,その10倍以上のスイッチング周波数を持つインバータを作成する。具体的には,スイッチング周波数200kHz~500kHzを大電力で実現させる。現状では,スイッチング素子として,高速かつ大電力のMOSFETが現実的であるが,SiCを用いた新型の半導体素子がいよいよ世に出てくるタイミングであり,タイミングが合えばSiCの使用も考慮に入れている。本研究においては,アンテナの動作周波数の低周波化と,スイッチング周波数の高周波化を共に行ない,それぞれの限界周波数で動作させるため,使用するスイッチング素子はその時点での最高の物を使用する。本提案は,提案する手法と共に,高周波でPWM制御を行うインバータの開発も重要な目的の一つである。そのため,電源の作成は妥協なく高効率のものを追求する。以上の実験装置一式を完成させ,提案する手法の有効性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、負荷側におけるパワーエレクトロニクスを用いたインピーダンスマッチング技術に注力したこともあり、来年度に備えて資金を確保しておく必要があった。とはいえ、基本的には電磁界解析用サーバが殆どの経費を占めているので、繰越額は約3%程度の額になった。繰越金は回路制作の際の費用にする予定である。
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