研究課題/領域番号 |
23656198
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
高島 和則 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303707)
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研究分担者 |
水野 彰 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20144199)
栗田 弘史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512177)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バリア放電 / φX174ファージ / 不活化 / コートタンパク / 核酸 |
研究概要 |
本研究の目的は放電プラズマを用いた殺菌・ウイルス不活化・細胞破壊プロセスの選択性を向上させ高効率化を図るために、添加剤と放電プラズマを併用する新規手法のfeasibility study を行うことである。本研究では、単独では毒性を持たないがプラズマへの暴露によってウイルスの不活化する物質あるいは細胞への毒性を有する物質へ変化する物質を探索することを目指す。 この目的を達成するため、放電プラズマによって細菌やウイルスに与えられるダメージのメカニズムを調べる実験を行った。核酸とそれをコートするタンパク質のみからなるウイルスの一種であるφX174ファージを検体として放電プラズマによるダメージがコートタンパクと核酸のいずれに存在するかを調べた。 大気圧バリア放電プラズマに暴露したφX174ファージの感染能の評価結果から、乾式検体、湿式検体のいずれを用いた場合でもバリア放電によってコートタンパクの化学修飾や分解、核酸の分解が生じることが分かった。回収した検体から抽出した核酸をトランスフェクションすることによって核酸に与えられたダメージを分離して評価した結果、大気圧バリア放電プラズマのφX174ファージに対する不活化は主としてコートタンパク質の化学修飾や分解に起因していることが分かった。 また、過酸化水素を添加剤として放電プラズマと過酸化水素の併用による殺菌等の効果を調べた結果、これらの併用による効果の著しい増強は見られなかった。しかしながら、過酸化水素と2価鉄が共存する際に過酸化水素の効果が増大することが観測されたため、生体内に存在する鉄イオンによるフェントン反応の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、(1)放電プラズマによって直接的に生じる反応を調べることおよび(2)単体では殺菌効果がないか極めて低いが放電プラズマへの曝露によって顕著な殺菌効果を生じる添加物の探索を目標としていた。 上記の(1)に関しては、大気圧バリア放電プラズマに暴露したφX174ファージの感染能の評価結果から、φX174ファージの不活化は主としてコートタンパクに与えられたダメージによるものであることを明らかにした。(2)に関しては、過酸化水素を単独で用いた場合は放電プラズマとの併用によって著しい効果の増強は見られなかったが、フェントン反応の関与を示唆する実験結果を得た。 以上のことから本研究はおおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度に引き続き放電プラズマによって誘起される反応の同定を目指した研究を進めると同時に過酸化水素とフェントン反応と放電プラズマによる反応の増強・局在化に関する実験的検討を行い、詳細な条件探索を行う。 さらに、放電プラズマによる直接的な反応が酸化反応であると考えられていることから、酸化によって毒性を有する物質に変換されるような添加剤を調べる。大気圧中での放電では液相には主として酸化反応が誘起されるが、窒素ガスやアルゴンガスを媒体としたプラズマを用いることで酸化以外の反応によって単体では細胞毒性のない薬剤から殺菌剤を得ることができるか検討し、これらの添加剤と組み合わせて用いるプラズマの条件の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するために必要な設備類は現有物品を利用することが可能である。したがって、本年度は研究費を主として実験の遂行に必要な消耗品類の購入に使用することとする。具体的には、検体の調製や分析用試薬の購入、放電プラズマ発生装置の製作、雰囲気制御用のガスの購入に充てる。また研究費の一部は、得られた研究成果の発表や情報収集のための学会もしくは研究会参加のための旅費にも充当するとともに、研究を効率的に遂行するための研究業務補助者の雇用に必要な経費にも充当する予定である。
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