研究課題/領域番号 |
23656198
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
高島 和則 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303707)
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研究分担者 |
水野 彰 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20144199)
栗田 弘史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512177)
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キーワード | プラズマジェット / バリア放電 / MS2ファージ / 不活化 / コートタンパク / RNA |
研究概要 |
本研究課題は放電プラズマを用いた殺菌・ウイルス不活化・細胞破壊プロセスの選択性と効率の向上を図るための新規手法の開発と原理的な検証を行うことを目的としている。そのため、本研究ではこれらの対象物に対して単独では全く毒性を有しないか非常に弱い毒性しか示さない物質と放電プラズマを併用することによって毒性を増強することが可能か実験的な検討を行った。また、プラズマによるバイオパーティクル損傷メカニズムの解明を目指して、RNAとコートタンパクからなる単純な構造をもつMS2ファージを用いた損傷個所切り分けの実験を行った。 前者では、プラズマジェット照射による大腸菌殺菌実験の結果から、硫酸第一鉄を添加することによってプラズマジェットの効果が増強されることが分かった。これ以外の硫酸塩を添加した場合には効果の増強が見られなかったことから、効果の増強には二価鉄イオンが影響していることが示唆された。しかしながら、二価鉄イオンの至適濃度が試料の形状によって大きく影響を受けたことから、フェントン反応の関与が示唆されるが、その反応経路の同定には更なる検討が必要であることが分かった。 後者では、バリア放電によるMS2ファージ不活化の実験を行った。放電に曝露したMS2ファージの大腸菌への感染能から、放電への曝露量とファージ活性の関係を調べた。ファージ活性からはコートタンパクへのダメージとRNAへのダメージを評価することができる。また、放電に曝露したMS2ファージから抽出したRNAをトランスフェクションによって大腸菌に導入し、培養を行うことでRNAの活性を評価した。放電に曝露したMS2ファージのファージ活性とRNA活性の比較から、両者は放電への曝露時間に対してほぼ同一の不活化特性を示すことが明らかになった。このことから、MS2ファージのバリア放電による不活化ではRNAの損傷の影響が支配的であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は当初計画に沿って、(1)プラズマとの併用によって毒性が増強される物質の探索および(2)単純な構造のモデルウイルスを用いた損傷個所切り分けの実験を行い、それぞれ新規の知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は電子スピン共鳴装置によりプラズマ照射時に液体中に生じる活性種の同定を進める。また、各種の添加剤等を液体中に共存させた場合の活性種の挙動の解析等から液体中に誘起される化学反応の解明を目指す。さらに、出芽酵母のDNA修復酵素遺伝子のプロモータを利用したレポーターアッセイ系を構築し、プラズマによるDNA損傷を定量化する手法の開発を行い、放電プラズマと併用した場合にその効果を増強あるいは抑制する物質の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するために必要な設備類は現有物品を利用することが可能である。したがって、本年度は研究費を主として実験の遂行に必要な消耗品類の購入に使用することとする。具体的には、検体の調製や分析用試薬の購入、放電プラズマ発生装置の製作、雰囲気制御用のガスの購入に充てる。また研究費の一部は、得られた研究成果の発表や情報収集のための学会もしくは研究会参加のための旅費にも充当するとともに、研究を効率的に遂行するための研究業務補助者の雇用に必要な経費にも充当する予定である。
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