研究課題
本研究課題は放電プラズマを用いた殺菌・ウイルス不活化・細胞破壊プロセスの選択性と効率の向上を図るための新規手法の開発と原理的な検証を行うことを目的としている。そのため、今年度は反応素過程の理解を目指して、プラズマに曝露したサンプル水溶液中のラジカルの分析を行った。また、昨年度までに核酸とコートタンパクからなる単純な構造をもつバクテリオファージを用いてウイルス不活化要因の評価を行ってきた。今年度は応用的により重要なターゲットである、ヒト由来の細胞(ガン細胞等)を用いたプラズマ曝露の影響評価を行った。前者では、ラジカルとラップ剤と電子スピン共鳴(ESR)装置を用いたプラズマジェット照射水中のラジカル測定を行い、プラズマ照射水中に生成されるOHラジカル量とプラズマ照射条件との関係を実験的に評価した。その結果、スピントラップ剤を含む水溶液にプラズマを照射した場合、照射時間の増加と共にOHラジカルを示唆するESRシグナル強度が増加することがわかった。この事から、プラズマ照射によって水溶液中に最終生成物あるいは中間生成物としてOHラジカルが生成されることが示唆された。また、プラズマ照射後常温下で一定時間静置した照射水にスピントラップ剤を加えた場合、時間経過とともにOHラジカルを示唆するESRシグナル強度が減少することが観測されたことから、液相中におけるOHラジカルの寿命は気相における寿命と比較して、見かけ上顕著に大きな値を示すことが分かった。このことはOHラジカルが放電の結果液相に生じた何らかの比較的長寿命の前駆体から生成されている可能性を示唆している。後者では、実験系を構築し、アポトーシス誘導のためのプラズマジェット照射条件の探索を行った。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
IEEE Transactions on Industry Applications
巻: vol. 50 ページ: 1397-1401
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 53 ページ: 05FR01A
10.7567/JJAP.53.05FR01