研究課題/領域番号 |
23656201
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大西 徳生 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (50035812)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 蓄電池 / 均等充電制御 / 均等放電制御 / 定電流源 / 選択スイッチ / DCDCコンバータ / 過充電保護 / 過放電保護 |
研究概要 |
近年、エネルギー問題の急浮上と共に蓄電池の活用研究が注目を集めている。電力用としての蓄電池は高い電圧で働かせるため、数多くの蓄電池を直列に接続して用いており、それらを一括充電する場合、各電池セルを監視し、電池のばらつきがあると、満充電に至った蓄電池が過充電になり蓄電池を損傷、発火するなどの事故を生ずる恐れがある。このため、どれかの蓄電池セルが過充電となった時点で、それ以外の蓄電池が充電できる状態にあっても一括充電を終止させており、システム全体の蓄電池容量を下げてしまう恐れがある。蓄電池の充電器として、細かく蓄電池セル単位で充電器を接続して、監視制御することは、蓄電池システムとしても、大変複雑化、大型化し、経済的にも実用的でない。今後の電力用蓄電池応用分野を拡大させる上で、小型、軽量で、かつ組蓄電池単位、セル単位での細かな充電制御ができる蓄電池の均等充放電制御シスムの開発が急務となっている。 本研究では、一組の半導体スイッチで構成される昇圧チョッパ制御定電流源とサイリスタ等の選択スイッチ回路を組み合わせた極めて簡単な回路構成により、個別蓄電池の充電放電制御が出来る均等充放電制御回路を提案し、実用的な観点から詳細な検討を加えることを目的としている。 本研究では、先ず、多数の蓄電池を均等充電する提案の均等充電制御回路動作をシミュレーション解析により、組蓄電池、複数個直列接続した組蓄電池および全ての組電池を直列に接続した蓄電池が、制御指令どおりに充電制御できることを確認した。 次に、数十ボルト程度の組蓄電池を直列に接続した電池群に対し、一個の電流形DC/DC回路による電流源回路と、サイリスタを用いた組蓄電池選択回路による均等充電制御装置を試作し、個別充電、複数個充電、一括充電が出来ることを4個の鉛組電池に対して実験を行った結果、個別充電から複数個一括充電までの制御が実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度までの研究の達成状況は下記のとおりで、これまでの研究成果を取りまとめ、提案回路と基本制御動作についてはすでに電気学会半導体電力変換研究会で発表を行っている。1)均等充電制御回路の基本動作解析:複数個の直列接続された蓄電池の均等充電制御回路が、シミュレーション解析の結果、制御指令どおりに充電制御できることが確かめられた。2)組蓄電池均等充電制御回路の試作:組電池として鉛蓄電池を4個直列に接続した電池群に対し、一個の電流形DCDCコンバータによる電流源回路出力にサイリスタを用いた選択回路による組蓄電池に対する均等充放電制御装置を試作した。3)組蓄電池に対する均等充電制御回路の実験:実験により、均等充電制御動作の確認を行ったところ、組蓄電池毎に電圧検出を行うことなく、1個の電圧検出器で組電池電圧が検出でき、個別充電から複数個充電まで選択制御でき、所期の均等充電制御できることが確かめられた。なお、均等充放電制御回路の基本的構成は同じであるが、パルス電流での充電を避けた改良形充電回路についても実験を行い、支障なく均等制御できることを確かめられた。 以上により、研究達成度に関する自己評価としては、当初の計画以上に進展していると自己評価した。なお、研究経費としては、充電制御回路の基本回路の試作部品と充電実験のための電源購入経費に充て、残額については次年度の実用レベルでの実証試験研究経費に充当することで進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、主として組蓄電池に対しての均等充電制御法についての基本動作について実験検証を行ったが、平成24年度は、組蓄電池を構成する蓄電池セル単位での均等充電制御回路と実用規模の組蓄電池の均等充電制御回路を試作し、均等充電制御システムが実用化に供することができるか、平成24年度における下記の研究計画に基づき実証試験研究を行う。1)蓄電池セル単位での充電制御動作の確認:蓄電池セル単位での充電管理制御が必要となるニッケル水素電池やリチウムイオン電池の満充電検出法等の基本的な充電制御動作を実験により検証する。また、リチウムイオン電池に対して、提案する均等充電制御回路を、オン電圧降下の低いMOSFETや場合によってはリレーを選択スイッチとして用いることにより、蓄電池セル単位での均等充電制御回路を試作する。2)蓄電池セルを含む組電池均等充電制御システムの検討:蓄電池セル単位の均等充電制御回路を組電池とし、組蓄電池を複数個直列に接続した蓄電池群の均等充電制御回路全体の管理制御システムを構築し、実用レベルでの実証試験研究を行う。また、特性の異なる組蓄電池均等充電制御の検証:提案の均等充電制御装置が、蓄電池のリユースにも対応対して、特性が異なる組蓄電池に対しても、接続される蓄電池の寿命や種類が異なっても充電制御できるプログラムの開発と実験による検証を行う。3)均等放電制御動作の実験確認:充電制御だけでなく過充電された蓄電池から電力を電源に回生させ、他の蓄電池に充電する均等放電制御も可能であり、試作した組蓄電池均等充電制御回路の選択スイッチの方向を逆に接続し、均等放電制御装置としての制御動作を実験検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究では、蓄電池に対しての均等充電制御法についての基本動作についての基礎的な実験検証を中心に行ったため、研究経費(1,040,505円)を繰り越すことができた。 平成24年度の研究では、組蓄電池の均等充電制御に加えて、組蓄電池を構成する蓄電池セル単位での均等充電制御試験を行う予定であり、研究用としての均等充電制御装置の試作に多額の経費が必要となる。平成24年度の研究経費に平成23年度からの繰越研究費を合算して装置の試作経費に充て、研究の遂行に活用する予定である。 平成24年度の研究費(約214万円)の使用予定内訳は、1)消耗品(装置試作部品購入経費・実験経費):150万円程度、2)謝金(装置の製作実験等):25万円程度、3)旅費(研究打ち合わせ、研究発表等):25万円程度である。
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