研究課題/領域番号 |
23656206
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秩父 重英 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80266907)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電気・電子材料 / 高輝度フェムト秒収束電子線 / ワイドバンドギャップ半導体 / 時間空間同時分解計測 / 結晶評価 |
研究概要 |
半導体・蛍光体ナノ構造や量子構造においてナノメートル領域で起きる発光過程の動的観測には、空間分解能と時間分解能を兼ね備えた時間空間同時分解分光法が必要となる。本研究の目的は、(1)禁制帯幅が広い材料にもキャリア励起が可能であるものの発生が非常に困難な、高輝度フェムト秒~ピコ秒パルス電子線を発生し、(2)これをナノメートル台の微小領域に収束することにより時間・空間同時分解分光計測手法を構築・確立し、(3)当該手法を用いて電子線のみで励起が可能なワイドギャップ半導体量子井戸・ナノ構造において、転位等の構造欠陥が非輻射寿命に与える影響や、ナノ構造サイズが輻射寿命に与える影響を把握することである。 平成23年度は、既存の背面入射(透過)型光電子銃(PE-gun)を用いた実験と理論解析を通じ、当該PE-gunをSEM装置に装着して「STRCL装置」とした場合に、収束電子パルスの「試料位置」での時間幅を短くするためには、初段での電子ビーム直径を細くしすぎない事が必要であることが明らかとなった。同時に、SEM像の解像度向上には、我々の持つSEMの2次電子捕集系を改造して捕集効率を上げる事の方が重要である事がわかった。これらの結果を鑑み、初期に考えていた電界放出型電子銃を用いるタイプではなく、寿命も長くとれて効率も高い、Auの比較的厚い膜を表面から光励起して光電子放出させる表面入射型フェムト秒パルス電子線発生に集中した。その結果、励起光源の収束をしない状態で2ケタ以上の光電子量を取れるようになった。既報では、背面入射を表面入射にすると約1ケタ、光電子発生効率が向上すると報告されており、光電子量増加の方向は矛盾していない。 今後、表面入射型光電子銃を用いたSEM解像度の評価や時間分解能の評価を行い、実際の試料の計測を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の背面入射(透過)型光電子銃(PE-gun)を用いた実験と理論解析を通じ、当該PE-gunをSEM装置に装着して「STRCL装置」とした場合に、収束電子パルスの「試料位置」での時間幅を短くするためには、初段での電子ビーム直径を細くしすぎない事が必要であることが明らかとなった。同時に、SEM像の解像度向上には、我々の持つSEMの2次電子捕集系を改造して捕集効率を上げる事の方が重要である事がわかった。これらの結果を鑑み、初期に考えていた電界放出型電子銃を用いるタイプではなく、寿命も長くとれて効率も高い、Auの比較的厚い膜を表面から光励起して光電子放出させる表面入射型フェムト秒パルス電子線発生に集中した。その結果、励起光源の収束をしない状態で2ケタ以上の光電子量を取れるようになった。また、パルス電子線の収束とそれを用いた2次電子像の撮像も完了した。以上のように、計画は順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度研究計画調書に記載の通り、マテリアル創成とSTRCL評価を行う。STRCL法のみで時間分解発光信号を計測可能なAlN薄膜や高AlNモル分率AlGaN、AlInN混晶(c面およびm面)を、有機金属化学気相エピタキシャル(MOVPE)法およびアンモニアソース分子線エピタキシャル(NH3-MBE)法により成長し、そのSTRCL計測を行う。また、六方晶BN微結晶の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究計画は上記のとおりである。これを実施するため、結晶成長の装置メンテナンス部品消耗品、原料や基板等、および発表旅費が主たる支出と考えられる。また、FEタイプ電子銃の作製も継続し、主に「空間分解能」評価と向上を行う予定である。
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