研究課題/領域番号 |
23656207
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齊藤 伸 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50344700)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ドライプロセス / 薄膜 / スパッタリング |
研究概要 |
ナノメートルオーダの周期構造を安定に形成する材料・プロセス技術は,ナノ構造を積極的に利用した将来の電子デバイスの量産に際して基盤技術となる.特に本技術は粒径 8 nm以下,粒径分散幅 1 nm以下の磁性結晶粒組織が必要とされる1 Tbit/inch2を超える超高密度磁気ハードディスク(HD)を実現する要素技術でもあるため,極めて重要である.従来のスパッタ法のみによるHD媒体作製技術では,成長初期核が下地上に互いに位置相関無く発生するため,結晶粒径の分散が発生する.そこで本研究では,スパッタリングをベースとしたドライプロセスのみにより自己組織化初期核 (ナノアイランド) 組織をナノ構造テンプレートとして形成させる技術を確立することを目的とする. 平成23年度には,下地層材料表層へのガスの自己組織化吸着現象や歪みの周期的緩和現象を利用し,8nm以下のナノアイランドを自己組織化配列させる技術を確立するため,まずスパッタ法による大粒径下地結晶粒 (粒径 100 nm以上) の形成を試みた.次世代HD材料である001配向fcc-fct系FePt薄膜への適用を見据えてfcc(001)配向Cuに注目し,001配向化と大粒径化の両立に取り組んだ.その結果,Ni系アモルファス層→加熱→酸素暴露→Cr層成膜なる成膜手順により,bcc Crを(110)面配向させることができることがわかった.さらに(110)配向Cr層→ (Pd層→)Cu層成膜なる成膜手順により,bcc(110)配向からfcc(001)配向への結晶配向面の変換が可能であることがわかった.各層のエピタキシャル成長では,格子定数差に起因する格子歪みが内在しており,ポストアニールプロセスにより,歪み緩和がトリガとなってCu(001)面配向結晶粒の100 nm以上への大粒径化が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の「大粒径化」に関わる材料・プロセス技術を確立できたため.ガス吸着状態や周期的歪みの緩和現象を被災復旧した走査電子顕微鏡(FEI社製NanoLab)を活用して直接観察する試料数を増やし、系統的な知見を積み上げる.
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今後の研究の推進方策 |
立方晶系001配向結晶粒の大結晶粒化の知見を,現行HD材料である六方晶系c面配向薄膜にも展開するように,研究展開を拡げて今年度実施予定の研究課題に望み,立方晶系/六方晶系共に自己組織化シード層技術を確立したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,自己組織化ナノアイランドからなるテンプレートをドライプロセスのみで実現するための基礎検討を主眼としている.薄膜作製を含む種々のドライプロセスを実施するチャンバに関しては,現有設備の超真空対応ディスクスパッタリング装置,多元同時スパッタリング装置(アネルバ社製)を活用できる.また六方晶系の研究課題に対応する薄膜材料用のスパッタリングターゲットに関しても現有のターゲットを利用できる.配列・結晶構造解析については,現有設備のサーマル型電子源・シュノーケル型検出器配置をもつ走査電子顕微鏡(FEI社製NanoLab: 微細加工用装置付属)ならびに薄膜構造評価用X線回折装置(リガク社製ATX-G)を使用する予定であり,研究費を物品費(消耗品費)に約60万円,成果発表旅費に成果40万円,分析費に約45万円を充当したいと考えている.尚,次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究 の遂行に使用する予定である.
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