ナノメートルオーダの周期構造を安定に形成する材料・プロセス技術は,ナノ構造を積極的に利用した将来の電子デバイスの量産に際して基盤技術となる.特に本技術は粒径 8 nm以下,粒径分散幅 1 nm以下の磁性結晶粒組織が必要とされる1 Tbit平方インチを超える超高密度磁気ハードディスク(HD)を実現する要素技術でもあるため,極めて重要である.従来のスパッタ法のみによるHD媒体作製技術では,成長初期核が下地上に互いに位置相関無く発生するため,結晶粒径の分散が発生する.そこで本研究では,スパッタリングをベースとしたドライプロセスのみにより自己組織化初期核 (ナノアイランド) 組織をナノ構造テンプレートとして形成させる技術を確立することを目的とする. 平成24年度には,昨年度実現した(001)面配向大粒径スパッタCu薄膜上へ,ナノアイランドを周期配列化させる技術を追求した。さらに,現行のハードディスク材料への適用も見据え,六方晶系材料の大粒径薄膜化とその上へのナノアイランド周期配列化を検討した。 まず立方晶系では,Cu層を汚染・損傷しないように,コンタミネーションフリーかつマイルドなイオン衝撃・窒素ガスの吸着を意図して,グリッドレスエンドホール型イオンガンによる表面修飾を行った.修飾表面上にAgドットを低成膜速度にて形成させたところ,周期配列傾向が認められた.今後エッチングとガス吸着/窒化の効果の切り分けを行う. 六方晶系については,大粒径薄膜を得るために,様々な材料・加熱プロセスの検討を行った.その結果,室温プロセスではMg層を用いた場合,加熱プロセスを許容する場合は,NiFeCr/貴金属薄膜をポストアニールした場合に,大粒径の下地層が得られることがわかった.今後,表面に共有結合性材料やイオン結合性材料を形成させ,周期的歪み緩和を導入してナノアイランドの形成に繋げたい.
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