研究課題/領域番号 |
23656211
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
野崎 眞次 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20237837)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | レクテナ / 整流器 / ショットキー / 酸化ニッケル / 光酸化 / 全空乏 / 太陽光発電 |
研究概要 |
本研究では、本研究では、光を高周波信号としてアンテナで受け取り、それを直流信号に変換できる光レクテナ用の超高速整流器を開発する。マイクロ波領域のレクテナはすでに製品化されているが、通常のショットキーダイオードが対応できる周波数は最高でも5THzといわれている。光レクテナ用超高速整流器の実現をめざした本研究は、非対称I-V特性を有するMIMトンネルダイオードの作製・評価、微小MIMトンネルダイオード二次元アレーの作製・評価の研究開発から構成される。非対称I-V特性を有するMIMトンネルダイオードの作製では、NiのUV酸化により極薄のP形NiOxを二種類の異なった金属間に挟んだ全空乏型のショットキーダイオードを作製した。金属とNiOxとの仕事関数差を考慮して、適当な金属を選択することにより従来のNiOxを金属間に挟んだMIMトンネルダイオードとは異なり、そのI-V特性には整流性がえられた。また、作製プロセスの詳細な条件などは再考する必要はあるものの電子線描画を使った微小ダイオードの二次元アレーの作製プロセスはある程度確立され、今後実験を繰り返すことにより、理想的なI-V特性が得られるダイオードの二次元アレーの作製が期待される。さらに、個々のダイオードの整流性も水蒸気によるUV酸化により向上することが予想され、初年度の研究によりある程度の本研究の目的達成のめどはついたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NiOxをNi金属間に挟んだトンネルダイオードの研究は最近数多く報告されているが、そのI-V特性において整流性は全く得られていない。本研究では、理論的に整流性が得られない理由を明らかにし、整流性を得るための金属を同定した。また、NiOxがP形半導体であることに注目し、そのキャリア濃度の制御により一方がショットキー、他方がオーミック接合を形成することを示した。さらにキャリア制御にはNi金属のUV酸化が有効であることを示したこれらの研究成果は、本研究が順調に進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はNiの効率的なUV酸化のためにUV酸化装置を改良し、均一にかつ再現性よくNiOx作製を行い、実験的に鮮明な整流性が得られる直径300μmのAl/NiOx/Niダイオードを作製する。さらに、そのダイオードアレーの作製技術が完全に確立した段階で、その作製プロセスに融合可能な光レクテナ用のアンテナ設計の共同研究を企業と実施し、平成25年度中に光レクテナの開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度で改良した光酸化装置を使って水蒸気によるニッケルの酸化を行い、酸化速度の向上を確認する。酸化温度を変え、ホール測定を行い、キャリア濃度、移動度の測定を行う。また、NiOxの仕事関数をUPS測定により求める。NiOxの物性の多く(電子親和力)は、明らかになっていないので、得られた仕事関数とキャリア濃度からこれらの物性を明らかにする。仕事関数とニッケルの酸化条件の関連が明確になれば、片側がショットキー、もう一方がオーミックになる適切な二種類の金属を選択することが可能となり、初年度以上に300μm直径のダイオードのI-V特性で整流性が得られると期待される。できるだけ低いオン電圧を維持しながらNiOxを厚くできるようにし、容量の低減を図る。膜厚が厚くて低いオン電圧となるショットキーダイオードは、0バイアスで全空乏し、トンネルで電流が流れるように膜厚を調整する。以上より、低いオン電圧、明確な整流性、低容量のダイオードの作製プロセスが確立される。確立された作製プロセスにより、トンネルダイオードを面積100 nm x 100 nmに電子線描画および金属電極のリフトオフにより微細化し、500μm角に100nm間隔で並べたトンネルダイオードのアレーを作製する。作製されたダイオードアレーのI-V特性及び容量を測定し、オン電圧、整流性、容量が光レクテナ実現に十分であるか、レクテナを研究開発している企業に相談し、共同研究を実施する。共同研究では、赤外光に対するアンテナの設計、レクテナ出力測定を企業が行い、その結果から本研究で得られたダイオードが太陽光発電用レクテナに利用可能か検証する。
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