本研究を通じてマイクロ波領域でのレクテナを製品化した企業との共同研究を実施した。レクテナの技術に精通している企業からは、光レクテナ用ダイオードに必要なオン電圧、オン抵抗、整流性などの情報が与えられ、それをもとにAl/NiOx/Ni超高周波ダイオードの開発を行った。NiOxをNi金属間に挟んだトンネルダイオードの研究は最近数多く報告されているが、そのI-V特性において整流性は全く得られていない。本研究では、理論的に整流性が得られない理由を明らかにし、整流性を得るための金属を同定した。 また、NiOxがP形半導体であることに注目し、そのキャリア濃度の制御により一方がショットキー、他方がオーミック接合を形成することを示した。さらにキャリア制御にはNi金属のUV酸化が有効であることを示したこれらの研究成果は、光レクテナの開発には重要と考え、本研究に多大な貢献を果たした企業と電気通信大学と共願で特許出願を行った。 今後はNiの効率的なUV酸化のためにUV酸化装置を改良し、均一にかつ再現性よくNiOx作製を行い、実験的に鮮明な整流性が得られる直径300μmのAl/NiOx/Niダイオードを作製する。さらに、そのダイオードアレーの作製技術が完全に確立した段階で、その作製プロセスに融合可能な光レクテナ用のアンテナ設計を共同研究の相手企業は開始する。本研究終了後も引き続き、企業と共同研究を実施し、平成25年度中に光レクテナの開発を目指す。Al/NiOx/Ni超高周波ダイオードと光アンテナからなる光レクテナの赤外光に対する出力を測定し、その結果をもとに光レクテナの特許を企業と電気通信大学で特許を共同出願する。関連特許出願後は、本技術を国内外に公表するため、学会発表や論文執筆などを積極的に行う予定である。
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