研究課題
平行なスピンを持った電子同士が合成スピンモーメントS =1のスピン三重項電子対を形成した特異な超伝導状態を高温で発現させることを目的とし、スピン一重項である酸化物、及び窒化物超伝導体と磁性体からなるヘテロ接合構造の作製とその電気的特性を調べた。まず、構造が単純で良好な界面特性が期待できる無限層構造酸化物超伝導体Sr0.9La0.1CuO2の作製検討を行い、超伝導コヒーレンス長が長いため界面制御に有利な、a軸成長膜が得られることを見出した。また、a軸成長Sr0.9La0.1CuO2薄膜と強磁性Sr2CrReO6薄膜、及び反強磁性SrLaVMoO6薄膜とのヘテロエピタキシャル成長を達成した。スピン三重項電子対生成のためのスピン反転制御の新しい手法として、ホイスラー合金系強磁性/反強磁性交換結合膜を検討した。成長温度により界面構造を制御したホイスラー合金系強磁性/反強磁性積層膜における磁気特性の評価から、優れた交換結合特性が得られることを明らかにし、超伝導接合におけるスピン反転層として有用であることを示した。次に、窒化物超伝導体NbN接合への磁性層の挿入効果を調べた。極薄(1.0 nm)の強磁性CoFe層を挿入した接合では、ゼロ磁場で極小となるジョセフソン臨界電流を有し磁場方向に対して非対称的なフラウンホーファー回折パターンが観測され、極薄強磁性層挿入に伴う接合界面での磁気的不均一性のよるスピン三重項超伝導の可能性が示唆された。今後、ホイスラー合金系反強磁性/強磁性交換結合膜を挿入したNbN超伝導接合、及びa軸成長Sr0.9La0.1CuO2薄膜と強磁性Sr2CrReO6、反強磁性SrLaVMoO6との酸化物ヘテロ接合における検討を行うことにより、スピン三重項超伝導電子対の高温動作化への指針が得られるものと期待される。
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